第2話 48番目の県
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圧倒的な力による蹂躙―――
高き壁にぶつかったとしても―――
君は柔道が楽しいか?
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静まり返る日本武道館。
おとぎ話のような光景に目を疑う
黒衣の集団、そのリーダー格である銀髪の男は、武道館全体に響き渡る
「聞けっ!! 我らはリヴォルツィオーネ、この
「……
「
銀髪の男は右手を高く天へと突き上げた。
爆撃で穿たれた天井の大穴から、
武道館の崩れた天井から侵入した無数のドローンが、液晶テレビを模したように編隊を組み、鮮明な映像が空中に映し出され始めた。
どうやらそれは臨時ニュースのようであり、柔道に関わる行政機関、柔道省の
『えー……今日未明に正式に決まった事なのですが、三重県から南に300㎞程離れた地点。ここに
口が開いたままその映像に釘付けになる
真偽を確かめるべく、スマホを手に取りネットニュースを確認すると、映像で流れた内容の記事が次々と表示されていた。
CGか何かだと思われていた映像は、
「やっと
「……長々と
長々とした
青桐と同じように将来を期待されている4人の若者の内の1人、『黒龍』
いや、それだけではない。
同じように歩を進める3人の若者。
『白龍』
『赤龍』
『青龍』
鉄砲玉のように飛んで行った黒城に続いて、龍の二つ名を有する3人が、謎の集団の前に立ち塞がる。
「
「んだとっ!?」
「黒城、一旦俺に
「あ"ぁ"!? ……ちっ、
「アレコレ言うのは勝手だが、大会の邪魔をした
「……」
「随分と
「……
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高校最強の男、赤神の提案により、急遽始まることになった模擬試合。
その試合の審判を務めることになった
「審判寺さんっ!!
「そうじゃ……正直、このまま
「ええ……さっきから連絡しているんですが……そもそも電波が繋がらないようです」
「
大方の打ち合わせが終わると、審判寺は白いテープを目の前に挟み、両者を静かに試合会場へと招き入れる。
1試合目は青桐と烏川と名乗る男。
両者は殺気を帯びた視線を交わしながら、無言で睨み合っていた。
法律が無ければ、この場で
「両者前へっ!! ……神前に礼っ!!」
「
「お互いに礼っ!!」
「
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高校生ランク3位「
VS
高校生ランク?位「
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「……
試合開始を告げる老審判。
審判暦数十年の大ベテランである彼は、目前で繰り広げられる試合運びに、久方ぶりに目を見開き驚愕してしまう。
先ほどまで競い合っていた学生達の技が、ナマクラに思えてしまうほどの研ぎ澄まされた投げ技。
軸が一切ぶれることのない回転から、澱みなく繰り出される背負い投げにより、青桐の体は宙を舞った。
試合時間僅か―――2秒!!
「……っ!! 一本っ!!」
「な……あ"ぁ"!?」
「へっへっへ~……
「うぇ!? 青桐先輩がっ!? つ、次は僕だよっ!!」
「あら可愛い。じゃあ次はアタシね、よろしく~♡」
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中学生ランク1位「
VS
高校生ランク?位「
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「
2試合目、白桜と天蠍と名乗る男の対決。
初手は慎重に様子を見ることを決めた白桜。
試合開始の合図が鳴り響くも、その場から動かず相手の出方を伺う。
一方、天蠍は相手の作戦など意に介さず、鼻歌交じりに歩を前へと進めていく。
白桜は胸が締め付けられるように呼吸が苦しくなるのを感じ、返し技の機会を狙うが、気が付けば自身の体が宙を舞っていた。
畳に背が触れた瞬間、全てを理解する。
天蠍の動きは、まるで視時間が飛んだかのように反応の出来ない動きであり、白桜の左足は時が止まった最中に刈り取られていたのだ。
反応すら許されぬ速さにより、白桜は天を仰ぎながら優しく倒される。
顔を覗き込む天蠍は、満面の笑みで軽やかに
「
「う、
「次は俺だぁっ!! ここからが本番だぞっ!!」
「BA・HA・HA~!! ならば次はぁ"~~~……俺だなぁ"!?」
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高校生ランク2位「
VS
高校生ランク?位「
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「……
3試合目。
黒城と刃狼と名乗る大男の試合。
野獣の如き雄叫びを上げると同時に、黒城は短期決戦を仕掛ける。
彼が使う技の中で、最強の火力を誇る一撃を、試合開始早々に繰り出そうとしていたのだった。
その雷に触れた瞬間、敵は体の自由を奪われ、回避はほぼ不可能となる。
雷属性最強の技。
No.93―――
「
轟音が武道館全体に響き渡る。
離れた間合いから一気に距離を詰め、両手で相手の道着を握りしめると、渾身の大外刈りを繰り出した黒城。
彼の代名詞とも呼ばれるこの技は、多くの強敵を薙ぎ払ってきた。
例え高校最強の赤神でも、この技を防ぐことは容易でない。
ましてや耐える事など不可能に近いのである。
だがしかし!!
彼は右腕一本で、全ての衝撃を受け止めたのだった!!
「あぁ~? おいおいおい!? こんなもんなのかぁ"?」
(はぁ!? 並みの大人だったら、軽々ぶとばせんだぞっ!? ……コイツ、山みてぇにビクともしねぇ……!?」
「UUUUUUU……HAAAAAAA……!! B"A"A"A"A"A"A"A"A"A"A"A"っ!!」
大外刈りを真正面から受け止めた刃狼。
右足に掛けられている足を力ずくで後方へと刈り取り、
同時に、畳に叩きつけられた衝撃が、武道館全体を揺るがす衝撃波となって襲いかかったのだった。
「ぐぁ"ぁ"ぁ"!?」
「なんだなんだぁ"!? 歯ごたえが無さすぎるぞぉ~~~~え"ぇ"!? この程度の
「黒城っ!? お前まで……!?」
「……後は貴様だけだな赤神」
「ぐっ……!!」
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高校生ランク1位「
VS
高校生ランク?位「
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「
4試合目、赤神と銀髪の男との対決。
高校最強の男、赤神は、目の前の相手が自らの想像を遥かに超える強敵だと即座に認識を改めた。
組手で優位に立ち、自分のペースに持ち込むべく、試合開始と同時に一気に距離を詰める赤神。
灼熱の業火を全身に纏い、両腕を突き出して突進する。
骨すら塵と化すはずの業火と対峙しても、銀髪の男は涼しげな顔でただ静かに待ち構えていた。
「俺の名は
迫りくる火の粉を右手で軽々と払いのけた獅子皇。
がら空きの横襟と左手の中裾を瞬時に掴み、業火を断ち切るような背負い投げで、赤神を畳に叩きつていく。
4人連続の1本勝ち。
合計試合時間はわずか11秒……
高校トップクラスの
唖然とする
息を呑む選手達。
この日を境に、柔道界が大きく揺れ動くことになるとは、誰も予測することができなかった……
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