アフメドの仮説(3)


「おそらく、今日も来ると思います」


アフメドも同じ考えだった。久しぶりの手術が控えていたが、それは執刀医としてではなく、他の医師の助手としてだった。エムレも他の医師とミーティングがあるらしく、そろそろ行かなければならないとのことだった。


またあとで話すことを約束してアフメドは手術の準備をした。手術を終え、休憩するエムレと話しているときにアフメド医師と話したいという人物がロビーにいることを伝えられた。


「行くんですか?彼と話して何か状況が変わるとは思えませんけど?」

「それでも行かないといけない。これも仕事のうちだからな。妻が心配なだけさ」

「本当にそうですかね・・・」

「とりあえず行ってくる」


アフメドは席を立ち、病院のロビーに向かった。彼はすぐに見つかり、彼もまたすぐにアフメドのことを見つけていた。


「アフメド医師、休暇はどうでしたか?」


何を言いたいのかはその顔が物語っていた。目が覚めない患者を放っておいて、休むことができるのかと。


「家で休養をとっていただけです。どこかへ遠くへ行っていたわけじゃないんです」


休む前と変わることなく、すぐに妻が目覚めないことに文句をつけ、何か隠していることがあり、今日こそはそのことを聞き出したいとでも考えているようだった。アフメドもいくつか話したいことがあった。


「奥さんは人を探していませんでしたか?」


夫は疑うような視線を投げながらも「探していた」と答えた。


「一人の女性を探していたと考えているのですが、あってますか?」


アフメドがその個人的なことについてなぜ知っているのか?夫の目は疑いで満ちていた。


「妻と何か話したのか?」


その声からアフメドが考えていたような方向に進んでいないことは明らかだった。アフメドが辿り着いた仮説を今ここで打ち明けることがこの一連の問題を解決に導くとは思えなかった。


患者と亡くなったアフメドの妻が生き別れた双子の姉妹であるなど、そう簡単に信じられることではなく、出まかせの嘘だと患者の夫が考えても不思議ではなかった。


アフメドもそのことを証明できるかと問われれば、難しかったが、これが真実であることを確信したいくつかの出来事があった。夫はそのことについて触れられたくないことを示すように、いつもとは違い、逃げるようにして病院から出て行った。


ただ彼の顔は怒りと疑いに染まっていたし、憎しみに近い感情がそこに加わっていた。エムレは思っていたよりも早く戻ってきたアフメドに驚き、何度も時計を見た。


「もう帰ったんですか?」

「また来ると言ったが、帰ったよ」

「あまりにも早い気がしますが、何かあったんですか?」

「いや、いつもと変わらない。予定でもあったんじゃないか?」


患者の妻についていくつかの質問を投げかけたことをエムレには話さなかった。


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