第9話 ガル・ガルフ
「セオ王子、いないわけがないのですよ。
ここには城中のメイドさんを集めているんですから!」
側近ハリーは、なかなかシンデレラ・メイドが見つからないというセオ王子にイライラしていました。
「しかし、いないのだ。
あの子は…一目見ればすぐ分かる特徴(どチビ)だったからか」
「で、どんな女の子なんですか⁈
セオ王子はちっとも特徴を仰って下さらないので、私には探しようがないのですよ!」
セオ王子がだんまり、ハリーがプンプンしている間に、パーティーの時間になってしまいました。
セオ王子も出席(主役!)しなくてはいけませんし、
メイドさんたちは準備やお世話で大忙しなのです。
仕方なくその場は解散しました。
セオ王子もガッカリしていますし、ハリーなんかは天国から地獄に落とされた気分です。
「やっと見つかったと思った王子の花嫁が…!」
セオ王子とパーティー広間に向かう途中、ちょっと落ち着いたらハリーが、
鋭いことを言い出しました。
「もしかして、いずれかのご令嬢だったのかもしれませんよ。
どうしてメイドの格好をしていたのかは分かりませんが…。
いずれにせよ、パーティーには、今このお城に滞在している全てのご令嬢がいらっしゃいますから、
そこで探されてはどうでしょう?」
セオ王子はめずらしく嬉しそうな顔をしました。
(あの子に会えるのか!
あのフワフワを、もう一度この腕の中に抱きしめたい…)
パーティーの大広間には、
色とりどりのドレスを身に纏った美しい令嬢が売るほどいました。(というのは王子の表現)
セオ王子が入ってくると、皆一斉に微笑みながら近寄ってきます。
王子曰く、(魚に餌を撒いているときのようだ)。
ご令嬢は皆、セオ王子の花嫁候補なのですが、
細やかなエスコート役として王家の血筋の男性も呼ばれていました。
「よう、セオ!」
肉を両手に持って、礼服は着崩し、見るからに令嬢をエスコートする気のない
馬鹿でかい筋肉バカ
みたいな男が、令嬢たちを押し除けてセオ王子の側にドカドカ歩いてきました。
「セオ、肉食べてるか、肉!」
男はセオに食べかけの肉を差し出します。
この国で、セオ王子を呼び捨てにしてこんな態度を取るのは、
ガリオン王と
このガル・ガルフ
だけでしょう。
ガル・ガルフはセオのいとこ、しかも戦友なので、特別な存在なのでした。
「ガル・ガルフ、来てたのか。」
「おう、肉がたらふく食えると聞いてな!
どーせ気取ったお前やご令嬢は、肉をガッツリくわねぇだろうと思ってな!」
ガル・ガルフは、ものすごく粗暴な男ですが、
実は顔も頭も、神の恵みと言われたテオ王子と引けを取らないくらい良いのです。
「どうだ、嫁は見つかったか?」
ガル・ガルフがどストレートに聞きました。
「それが…」
横にいたハリーが、事の経緯を手短に話します。
「おお、お前のおメガネにかなう令嬢がいたのか!
めでたいな!
よし、オレがどの子か当ててやろう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます