第5話 和風イケメン vs  犯人 1/2

「…はっ?」


 とまどったような犯人の声。

 俺にしてみれば願ったり叶ったりの和風イケメンの言葉ではあったけど、それにしても意味が分からない。


「何故ですか?コイツ犯人ですよ?早く捕まえてくださいよ。あなた、警察関係者ですよね?」

「日本語は理解できるようだね。とすると、わたしの言葉が聞こえなかったのかな?じゃあ、もう一度だけ言おうか。今すぐ彼を離したまえ。そして、もうすぐここへ来る巡査に大人しく捕まりなさい」

「…はぁっ?」

「ひったくりは窃盗罪。障害未遂罪と暴行罪も追加されたいのかな?あぁ、被害者は転んだ拍子に手首を骨折してしまったらしいね。だとすると、傷害罪は確定か」

「だから、ひったくりは」

「キミが犯人、でしょ」


 突然、乱暴に俺の体が解放された。

 勢いあまって地面に倒れ込んでしまった俺は、慌てて立ち上がって和風イケメンの傍に立つ。


 …犯人、意外に強かったから、さ。それに、この和風イケメンの方が、なんとなく強そうだし。


「どうしてですか?どう見たって、コイツが犯人でしょう?なのに何故、こんな金髪のヤンキーじゃなくて僕を犯人扱いするんですか。それに、そいつパーカーの右ポケット、確認してみてくださいよ。ひったくられた財布が入っているから」


 そう言った犯人は、いつの間にか頭に被っていたフードを脱いでいて、露わになっていたのは黒髪短髪の、いわゆる真面目そうな学級委員タイプ。


 …ていうかこの顔、なんか見覚えがあるような気が…

 いやいや、その前にっ!

 俺のポケットに財布だとっ?!


 慌ててポケットの中を確認しようとした俺を、和風イケメンが目で制する。


「そのまま」

「…はい」


 動きを止めた俺に小さく頷くと、和風イケメンは犯人へと視線を戻し、口の端を釣り上げて言った。


「わたしは外見で人を判断する人種が殊の外嫌いでねぇ」


 俺が記憶を手繰り寄せている傍らで、和風イケメンはニッコリと笑って犯人に対峙している。

 相変わらず、目はまったく笑ってはいなかったけど。

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