第8話 魔王軍四天王・インキュバスのトニー
轟たち一撃會館一行が魔王城の入り口に到着すると、頭に羊のような角が二本ある白いスーツを着たホストのような男が立っている。
「お前たちが一撃會館か。男臭くて本当に嫌だ!」
「なんでぇ、この歌舞伎町のホストみてぇな野郎は?」
「俺は魔王軍四天王の一人、インキュバスのトニーだ! 全員殺してやるが、女の弟子だけは助けてやるぞ!」
「そうか。おい、サラ! 相手は女と戦いてぇみてぇだ、おめぇが相手をしてやれ!」
「押忍!」
サラは最初の頃に轟がゴブリンの巣穴で助けた元魔術師の女性である。
「館長、僕も元四天王だったからわかるんだけど、トニーは部類の女好きで最低のクズだよ!」
「おい、キール! そんな見たままの情報はいらねぇから、どんな戦い方をする奴か教えろ!」
「トニーは動きが素早くて、その上、格闘技にも長けている。あのおねぇさん下手するとみんなの前で恥ずかしいことになるかもしれないよ……」
「いや、キール大丈夫だ。サラは困難を乗り越えてきた女だ。絶対に負けねぇよ!」
そして、サラとトニーが向き合い、試合が始まる。
「お嬢さん、俺に負けたら俺に抱かれてもらうよ!」
「じゃあ、あんたが負けたら、館長からお尻にお仕置きしてもらうから!」
キールの情報どおり、トニーは動きが早く、サラの突きや蹴りをかわしては、からかうように胸やお尻を触って距離を取ってくる。
「最低な戦い方だわ! でも強い……」
トニーはスピードでサラを翻弄すると、今度は後ろから抱き着いたり、次第にセクハラ攻撃も激しくなってくる。
「館長、アイツはインキュバスです。インキュバスに女性をぶつけるのは危険すぎます!」
「ジャック、大丈夫だ。サラは一番俺の戦いを近くで見てきたやつだ。必ず勝つ!」
「おい、サラ! 目で追うんじゃねぇ、気配を感じろ! あと、俺が教えたあの技やってみろ!」
「押忍!」
サラは後ろ髪をかきあげ、わざとうなじを見せるように髪を結わくと、スケベなインキュバスのトニーはまた背後から抱き着いてうなじの辺りにキスをしようと試みる。
サラは目を瞑りトニーの気配を感じ取ったかと思うと、体を反転させ裏拳でトニーの顔面を吹っ飛ばす。
無防備に飛び込んだトニーは更の裏拳を諸に受けて、そのまま倒れて動けなくなる。
「よくやったなサラ、てめぇの色気を囮にするとは考えたもんだぜ!」
「館長、僕の時みたいにトニーもお仕置きしてよ!」
「まったくおめぇは悪ガキだなキール!」
キールの頭をなでなでする館長。
轟は空手キッズにはとにかく甘い。
「おい、ジャック、そのホスト兄ちゃんのズボンを脱がしてケツをこっち持ってこい!」
「押忍!」
ジャックはトニーのズボンとパンツをおろし、お尻丸出しにして轟の前に運ぶ。
「おい、待て! 貴様何をする?」
「何をするってお仕置きよ! そういう約束だろ?」
「待て、そういうのはサキュバスにやれ! お前みたいなオッサンにそんなことされたら、俺はインキュバスとしてやっていけなくなる!」
「うるせぇな。魔女のねぇちゃんたちの時よりは痛くないようにしてやるから!」
「え、魔女にもやったのか? なんて非道な勇者だ……。ここ数百年、貴様のような鬼畜な勇者は見たことがないぞ!」
「知るか! 女神のねぇちゃんに勝手に連れてこられただけだ! 文句があるなら女神に言え!」
トニーはジャックやガイルに完全に押さえられ、轟はトニーのお尻に思い切りお仕置きの張り手を入れる。
「パチン!」
大きな音がすると、別のことをされると勘違いしていたインキュバスのトニーはお尻を叩かれた痛みを別の痛みと勘違いし、恐怖と屈辱のあまり気絶するのであった。
「なんだ、この世界の連中はやたら尻を叩かれることを恐れるな……。文化の違いか?」
お尻を一発ひっぱたいた程度で、気絶する魔王軍四天王を見て、理解不能になる轟館長なのであった。
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