第7話 魔王軍四天王・魔獣使いのキール
轟たち一撃會館一行は死の森を抜けて、魔王城の前までたどり着く。
「オジサンたちよくここまでこれたね。でも、残念、全員ここで死んじゃうよ!」
突如、目の前に角の生えた魔族の少年が現れる。
「なんだこのガキは! おい、坊や、家でマンガでも読んでな! さあ、おめぇら先を急ぐぞ!」
「ちょっと待てよ! 魔王軍四天王の一人、魔獣使いのキールって知らないの?」
「魔王軍の四天王だ~! ヒーローごっこは近所のお友達とでもやってな!」
(なんだコイツ、人の話を聞かないタイプか?)
キールは大ムカデを呼び出し、轟に向かって襲い掛かるように仕向ける。
「おい、ガイル! おめぇが相手をしてやれ!」
「押忍!」
轟向かって突進してくる大ムカデを正拳突きで止める高弟ガイル。
「へぇ、強いじゃん! でも、大ムカデには効かないよ! おじさんたち全員大ムカデの食べられちゃうよ!」
「何を言ってやがる、まるで夏休みに田舎でカブトムシ取ってはしゃぐ小学生みたいだな。うちのガイルがこんな昆虫に負けるわけねぇだろ!」
「夏休み? 小学生? 何なのこのオッサンムカつくな! 大ムカデ、全員食べていいよ!」
キールが命令すると大ムカデは再び暴れ出し、ガイルを吹っ飛ばし、近くの木々もなぎ倒す。
「館長、コイツ厄介です! 体が硬い上にあの無数の足がとんでもない脚力です!」
「おい、ガイル、おめぇ初めて俺とギルドで喧嘩した時、俺の足を引っかけようとして、下段蹴りで足を折られたのを覚えているか?」
「はい、あの時はとても痛かったです」
「あれよ! あのバット折りの下段蹴りこそ大ムカデ攻略のヒントだ!」
「押忍!」
ガイルは轟のアドバイスで足を狙うことに集中し、突進してくる大ムカデの足をバット折りのような下段蹴りでへし折っていく。
大ムカデは足を折られて、その巨体を動かせなくなり、ガイルに上から突きを喰らいまくり、遂には口から泡を吹いて気絶する。
「おい、ジャック、そのガキを連れてこい!」
「押忍!」
ジャックはキールを抱えて、轟の元へ連れてくる。
「おい、そのガキのズボンをおろして、ケツをこちらに向けろ! お仕置きの時間だ!」
「館長、ちょっと待て! そんな非道は魔王でもやらない! それは考え直してくれ!」
「バカ野郎! 悪いことしたらお仕置きに決まってるだろ! 俺の息子の恭一郎もガキの頃はよくこれで叱ってやったもんだ!」
「いえ、館長、それはあまりに鬼畜過ぎる! 魔族だけでなく、人族にも一撃會館の汚名が広まってしまいます!」
「じゃあ、ジャックおめぇがやるか?」
「いえ、俺には弟がいるので、さすがにそれはできません!」
「なんだコイツら、普段は魔物を容赦なく殺す癖にこんな時だけ人権主義かよ! いいから、そのケツにこちらに寄こせ!」
「おい、キール、トラウマになっても前向きに生きろよ……」
ジャックも遂に諦め、キールのズボンを下すと目を背けながら轟にキールを渡す。
「え、ちょっと待ってよ! こんなおじさんにそんなことされたら、ただのトラウマでは済まないよ! 本当に助けて!」
惨いと思いながらも目を背ける黒帯の高弟たち。
「まあ、そんなに長くはやらねぇから、大人しくしてろ!」
「お願い助けて!」
みんなが絶対に見たくない光景が起きると思ったが、轟はキールを膝に乗せると、お尻をパチン、パチンと叩きだす。
「え、館長、お仕置きって、お尻を叩くことだったんですか?」
「あ? 他に何があるんだ? この程度で大騒ぎしやがって!」
「いえ、何でもないです。すいませんでした……」
しばらく轟はキールのお尻を叩くと反省させ、一撃會館の門弟にして道着を着せた。
「おめぇはガキだから、黄色か緑の帯を巻いていいぞ!」
「じゃあ、黄色で……」
轟に他のことをされると思い、恐怖で戦意を喪失した魔王軍四天王の一人であるキールも轟の軍門に降るのであった。
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