第6話 館長と魔女
死の森を更に奥へと進む轟と一撃會館一行。
突如、轟たちの前に魔女の集団が現れる。
「なんだい、この姉ちゃんたちは?」
「館長、コイツら魔女です!」
「マジョ? あの痛みが喜びみてぇな性癖のやつらか?」
「いえ、そんな情報は聞いたことないですが、気を付けてください!」
「あなたが、轟、強いらしいわね! せいぜい楽しませてちょうだい!」
「楽しませるだ? どうやら筋金入りのど変態さんみてぇだな!」
「ど変態? このオッサンふざけてんの! 一気に潰すわよ!」
魔女たちは一斉に睡眠魔法を放ってくる。
「ドランク」
「スリープ」
魔女の突如放った睡眠魔法に門弟たちは気合で魔法を跳ね返すが、魔女を別のものと勘違いしていた轟だけは、魔法をもろに受けて爆睡してしまう。
「しまった! 館長がもろに魔法を受けて眠ってしまったぞ!」
門弟たちは慌てて轟の元へ駆けつけようとするが、魔女たちが目の前に立ちはだかり、邪魔をしてくる。
「今から、あんたたちの親分の首を刎ね飛ばしてあげるわ!」
魔女の中の一人が腰に刺していた剣を抜くと、眠っている轟に向かって剣を振り上げる。
しかし、魔女が轟に剣を振り下ろしたと思った瞬間、眠っているはずの轟は剣を腕で受け流し、起き上がりざまに魔女に回し蹴りを入れて吹っ飛ばす。
「な、なんで眠っているんじゃないの……」
魔女が轟を見ると、起き上がり構えを取っているが目は閉じていていびきもかいている。
「今のは偶然かしら、何人かで一斉に斬りかかるわよ!」
しかし、一斉に斬りかかっても轟は全ての攻撃をかわし、逆に斬りかかった魔女たちは全員、蹴りや突きで打ち倒されていく。
「館長の本能が危機を感じ取って体を動かしているんだ! 何万回と型稽古をされている館長だからこそできる芸当だ!」
高弟のジャックが眠りながら戦う轟に感動し、涙を流しながら他の門弟たちに説明をする。
そして魔女たちを打ち倒していく轟はだんだん魔法が解けていき、遂に目を覚ます。
「おっと、眠っちまってたか。まさか寝込みを襲われるなんてな。新小岩で泥酔してオヤジ狩りに襲われた時以来だぜ!」
「新小岩? オヤジ狩り? ちょっと待ってちょうだい参ったわ! 降参します!」
魔女たちは眠りながら暴れた轟に滅多打ちにされ、完全に戦意を喪失する。
「館長、コイツら魔女ですし、許しちゃだめですよ!」
「バカ野郎、ジャック、おめぇが口出しすんな!」
「お、押忍!」
「俺の世界にも男女問わず、こんな趣味の連中は多くはねぇが存在していた。まあ、黒帯の強さを知らず、俺らの拳が気持ちいいくれぇに勘違いしていたんだろ。この姉ちゃんたちに罪はねぇ!」
「お、押忍!」
轟の勘違いにより命拾いできた魔女たちは、帽子を取り、轟の前で頭を下げて襲撃したことを謝罪する。
「本当に申し訳ありませんでした!」
「まあ、いくら趣味でも黒帯の拳を試そうとしちゃだめよ! 今度はうちの白帯連中に言って、あんたらのケツを蹴るくらいのサービスはしてやるから、今回はこのくらいにしときな!」
「え? 白帯? ケツ? よくわかりませんが、本当にありがとうございます!」
こうして轟の勘違いもあり、魔女たちは命まで取られることなく帰ることができ、轟たち一撃會館一行は再び魔王城を目指すのであった。
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