幕間:黒竜の巣で
~魔王城への途上~
ここで黒竜たちを
その聡明な眼が
──やれやれ。
デデガイネは熱い吐息を漏らした。
人間どもはまたしても〝勇者〟とやらを送り込んできたのだろう。ここを越えた先に魔王城がある。
あの魔王の強大な力を、人間たちは理解できていないようだった。遠く離れたこの場所ですら、時折
そんな絶大な存在と人間を戦わせることなどない。
だから、デデガイネはここで番人としての宿命を
「止まれ、人間」
人間はゆっくりと歩みを止めた。聞く耳は持っているらしい。
「引き返せ」
「どうして?」
人間はそう尋ねた。
「ここは我らの住処だ」
「お前たちには興味ないんだよ。ここを通りたいだけ」
──やれやれ。
デデガイネは
「どうしても通りたければ──」
瞬間、人間の姿が掻き消えて、デデガイネの鼻っ面を吹き飛ばした。
「──なっ?!」
表情ひとつ変えずに、その人間は拳を突き出していた。
その刹那の接触だけで分かる、圧倒的な力量差……。
だが、デデガイネの
衝撃音がして急下降した人間の
その時になって、別の黒竜が翼を鳴らした。それほどまでの短い時間だったのだ。
「貴様ァ──!」
昏倒しかかったデデガイネを
黒竜たちの間を縫うように歩いて来て、人間はデデガイネの前に立った。
「通りたいだけなんだよ」
その瞳に何が映っているのか、デデガイネは掴み取ることができなかった。そんなことは五百年以上生きて初めてのことだった。
「お前、名前を何という?」
人間は言った。
「アーガイル」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます