幕間:想い胸に
~かつての二人~
その細い腕をしっかりと掴んだのはアーガイルだった。
「──ったく、だからついてこない方がいいって言っただろ」
彼は腰から下げた剣の柄に手を置いた。その剣で山に
「こ、これは事故みたいなもんだから……!」
アーガイルは溜息をついた。
「だとしても、お前の両親に怒られるのは俺なんだからな」
「ごめ~ん……」
「とにかく、よそ見しないでちゃんとついて来いよ。俺の動きをしっかり見ておけ」
言われなくてもスカーレットはそうしていた。
いつからか逞しくなったその身体。どこか達観したような瞳の輝き。いつの間にか洗練された剣技。
そのどれも見逃しはしなかった。
「本当にシルディア騎士団に入るの?」
スカーレットは不安げに前を行くアーガイルの背中に問い掛けた。その向こう、山の稜線からは傾きかけた日の光が投げかけられている。
「まあね」
「危険じゃないの?」
「大丈夫さ。俺ひとりじゃないし」
「魔物とか魔王と戦うんでしょ?」
魔王城に近いシルディアには他の都市の軍隊との戦闘は歴史上ほとんどない。
「いつか魔王が死んで平和な世界がやって来たら、みんな幸せだろ?」
「そりゃあ、そうだけど……。今のままだって……」
魔王の軍勢が攻め入ってくることはない。長い間、人間と魔王は均衡状態にあるらしい。
「それに」アーガイルは立ち止まってスカーレットを振り返った。「最近、魔法も使えるようになって強くなってきた気がするんだ。才能なのかもな」
調子に乗って歯を見せるアーガイルを、スカーレットは心配そうに見つめた。
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