第45話 レジ前の睨み合い

 真夏のコンビニは正にオアシス。


 ピポパポ~ン♪


「いらっしゃいませ~!」


 誰もが見惚れる、巨乳ギャル店員がそこにいた。


「あっ、ショータだ!」


 その声に、俺は軽く手を上げて応える。


「えっ、里菜ちゃん。あの男子は……」


「あたちのカレぴです♡」


「「「「「ズガーン!?」」」」」


 レジ前に集っていた男たちが一網打尽に倒れた。


「……今まで、どれだけ里菜ちゃんのレジで金を払ったことか」


「課金が……無に消えた」


「◯子を返してくれ……」


 同じ男だけど、しょうもない連中だな……


「へぇ~、さっすがリナぱい。エロ営業してんだね~」


「んっ?……って、のぞみん!? 何でショータと一緒に……」


「ねぇ、リナぱい。ちょっと、おたくの彼氏くん、貸してよ」


「はあああああああああぁ!?」


「乳だけじゃなく声もデカいなぁ~」


「やかましいわ! ていうか、どういうこと?」


 リナちゃんは、キッと俺と七野さんを交互に睨む。


「いや、その……」


「ほら、あたしって爽やかスポーツ美少女でしょ? どこかのマクラ営業をなさっているクソビッチと違って」


「ぶちころすぞ」


「とにかく、この炎天下でいつもカラダを動かして、疲れがたまってんの。だから、加瀬ちんにマッサージしてもらいたくて」


「マッサージ……」


「そっ。だって、加瀬ちんってゴッハンの持ち主じゃん? その力で、あたしの疲れも吹き飛ばして欲しいなって」


「ダ、ダメだし、そんなの」


「え~、前はさせてくれたじゃんか~」


「だって……」


「あれれ~? もしかして、自信がないの?」


「はぁ?」


「そんだけデカい乳しておきながら、心臓はノミみたいに小さいのかな~?」


「ちょい、あんた。舐めんなし」


 リナちゃんが珍しく、ドスの利いた声を出す。


 いつもはとにかく可愛いブリッコギャルなのに。


 それに関して、リナちゃんもすぐに気が付いたようで。


 ハッとした顔になり、俺の方を向いて……


「……ショータぁ~、あたちぃ~、この女ぁ~、キライ♪」


 親指をしゃぶりながら言う。


 あざといなぁ~。


「リナぱいさぁ~。あんた、このままだと、人としてダメになるよ?」


「えっ?」


「加瀬ちんと仲睦まじいのは良いことだけどさぁ~……ぶっちゃけ、何か幼児退行していない?」


「そ、そんなことは……」


「カラダだけ、エロく育ってさ。けど、頭はお花畑の幼稚園児じゃん」


「そ、そんなことないもん! あたし、ちゃんと大人のオンナだから!」


「だから、それはカラダだけでしょ」


「うぅ~……わーん! のぞみんがイジめるよ~!」


「リ、リナちゃん!? 落ち着いて!」


 幸い、いまはお客さんがいないけど。


 あっ、さっきの野郎さんたちは、ゾンビみたいになってすでに退店されました。


「違うよ、リナぱい。これはイジメじゃない。友人としての、愛の忠告だよ」


「ほえっ?」


「あんた、前はもっと頭がキレそうなダウナー系のギャルだったのに。まあ、さっきのエロオジサンたちをあしらうあたり、思考回路はまだマトモかもしれないけど……どちらにせよ、ずっと加瀬ちんに依存したままだと、良くないでしょ?」


「それは……」


「これからの人生、ずっとともに歩みたいのなら……あんたも、少しは成長すること。その第1ステップとして、加瀬ちんへの依存心を減らす」


「……まあ、確かに」


「ってことで、愛しの彼氏くんがちょっとくらい他の女と遊んでも動揺しないメンタルを獲得するトレーニングってことで、お借りしまーす♡」


「ふざけんな、テメェ!」


「リ、リナちゃん?」


「ハッ……こ、このクソ泥棒ネコちゃんめぇ~♪」


 すごい引きつった笑顔で言うリナちゃん。


「リナちゃん」


「へっ?」


「俺、大丈夫だから。七野さんには、あくまでもマッサージをしてあげるだけ」


「ホントに? ムラムラしたりしない?」


「それは……多少はするかもしれないけど」


「ウワキもの!」


「で、でも……俺が愛しているのは、リナちゃんだけだから」


「ショ、ショータ……うれちい♡」


「あはは、彼氏も大概だったわ。加瀬ちーん、リナぱいを甘やかすなって」


「そ、そうかな? でも、どうしたって、リナちゃんが可愛くて……」


「えへへ……のぞみん、レンタルオーケーだよ♪」


「マジで?」


「うん♪ これも1つのチャレンジかなって。そこそこ可愛いのぞみんと2人きりになっても、ショータが浮気しないかっていう」


「誰がそこそこだ。一応、あんたと佐伯ちゃんと並んで、三大美女って言ってもらっているんだけど?」


「ふふふ、君は四天王の中で最弱なのだよ」


「だから、3人だっつの。てか、ギャルのくせに何かオタクっぽくね?」


「あ、たぶん、俺の影響で……」


「うふふ、すっかりショータ色に染まっちゃいました」


「ねえ、そろそろ殴っても良い?」


 七野さんはピキリ笑顔で言う。


 先ほどのリナちゃんと立場が逆転していた。


「ボーリョク反対!」


「大丈夫、そのミルクタンクを殴るだけだから」


「ニッコニコして言うな~! ショータ、守って~!」


「あ、リナちゃん、お客さんが……」


「いらっちゃいませ~♪」


 どうあがいても、俺の彼女は可愛い。




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