第37話 ちょっと本気を出す女

「へぇ、加瀬ちんって、けっこう良いカラダしてんだねぇ~」


「ま、まあ、鍛えているので」


「何か部活って入っているの?」


「いや、特には……」


「もったいないなぁ。良ければ、ソフト部に来る?」


「えっ? いや、ソフト部は女子だけでしょ?」


「大丈夫、公式戦には出られないけど……毎日、ハーレムタイムだよ♪」


「ハ、ハーレム?」


「てか、あたしの腹筋どう? そんなバキバキに割れてない、けど良い感じに筋が入った、エロい腹筋じゃない?」


「た、確かに……」


「乳もリナぱいには及ばないけど、エロいでしょ?」


「う、うん、そうだね。七野さんは、魅力的だから、すぐに良い彼氏が出来るよ」


「えぇ~、今んとこ、加瀬ちんが出会った男子の中で良い感じなんだけど~」


「えぇ? いや、そんな……」


 とか言っていたら、


「ウワキ、ウワキ、ウワキ、ウワキぃ~!」


 案の定、リナちゃんが怒った。


「ちょっと、のぞみん! 他人のかれぴを堂々と口説くなんて、どういうつもりよ!?」


「あ、ごめん。マジで最近、ムラムラしちゃって。この思春期エロボディが、疼きまくるの」


「だったら、大貫に相手してもらいなよ」


「いやぁ~、出来れば初めては、おっきい方が良いしな~」


「このドスケベが。だったら、通販でオモチャでも買えば?」


「女子高生がそんなの買っちゃダメでしょ。コンプラ違反だよ」


「他人の彼氏を奪うのも立派なコンプラ違反ですぅ~!」


「でも、佐伯ちゃんに聞いたけど。あんた、佐伯ちゃんは、加瀬ちんにアプローチすんの許しているんでしょ?」


「うっ、ま、まあ……メイちゃんは、公認のライバルだから」


「じゃあ、あたしも公認してよ。友達でしょ?」


「友達だったら、その彼氏を奪う真似はしないでくれるかな~?」


「全く、ケチ臭い女だなぁ~。乳はデカいくせに、器は小さいと来た」


「のぞみん、そろそろビンタするよ。おっぱいで」


「マンガかよ。てか、加瀬ちんにもしたことあるの?」


「ショータは良い子だから、ビンタとかしないし。パフパフはしているけど♡」


「てか、そんなに加瀬ちんのことが好きなの?」


「もち♡」


「じゃあ、例えばだけど。もし、加瀬ちんが不能になったらどうする?」


「えっ、不能?」


「そっ、もう二度と立ちませんって言われたら……どうする?」


「そ、それは……あたしは、例えエッチ出来なくても、ショータと一緒なら幸せだから。それに、本番は出来なくても、キスとかおっぱふとか、色々と出来るし……」


「ふぅ~ん? ちなみに、佐伯ちゃんはどう?」


 静かに佇んでいた芽衣ちゃんは、


「私?」


「そっ。もし、加瀬ちんが不能になったら、どうする?」


 七野さんの問いかけに、彼女は少しだけ、考える素振りを見せた。


「……立つまで舐めるわ」


「えっ」


 その回答に、みんなして押し黙る。


 さざ波の音だけが聞こえていた。


「……エッロ」


 七野さんの声によって、みんなしてせきを切ったように口走る。


「さすが、ちゃんメイ。清楚ビッチというか、もはやその枠に収まらんわぁ」


「マジで、愛が深いよね」


 ギャル2人が頷きながら言う。


「星宮ちゃんは、どう思う?」


 七野さんが聞くと、


「わたしは……すごい覚悟だなって思います」


「うん、だよね。マコちゃん先生はどうですか?」


「わ、私? えっと……」


「あ、男の人のアレ、舐めたことあります?」


「あ……あるわよ」


「じゃあ、どう思います?」


「そ、そうねぇ……アゴが疲れないかしら」


「おばさんかよ」


「誰がおばさんよ!」


 ワーキャーと騒ぐ女子ズ。


 その一方で……


「……ぐぬぬ」


 リナちゃんが、何だか悔しそうに歯噛みをして、芽衣ちゃんを見つめる、というか睨んでいた。


 対する芽衣ちゃんは、長い黒髪をかきあげながら、にっこりと微笑む。


 そのまま、俺の方に向いて、ドキッとする。


「ちょっと、海辺を散歩したいのだけど……昇太くん、ボディーガードしてくれない?」


「ボ、ボディーガード?」


「ええ、ナンパ避けに……ダメ?」


「いや、まあ……」


 と、俺が返事に困っていると、


「だったら、あたしも行く。ていうか、ボディーガードなら、大貫を連れて行けば? 大して役に立たないだろうけど」


「おい、舞浜。オレのこと舐め過ぎだろ」


「はぁ? 誰もあんたのチ◯ポなんて舐めないっつの」


「そっちの話じゃねーよ!」


 リナちゃんと隼士が小競り合いしていると、


「……カップル交換」


「「へっ?」」


「まあ、もう私と隼士くんは、カップルじゃないけど……お互い、刺激を得るために、やりましょう。結局、提案したまま、宙ぶらりんだったし」


「いや、でも……」


「あら、里菜ちゃん。もしかして、自信がないの? 七野さんが言った通り、胸は富士山みたいに大きくても、器はおちょこばりなのかしら?」


「な、何だとぉ~?」


 リナちゃんは、芽衣ちゃんの挑発にあっさり乗ってしまう。


「良いよ、受けて立とうじゃないの。言っておくけどね、ショータはあたし以外の女でボッ◯しないんだからね!」


「ちょっ、リナちゃん?」


「じゃあ、もしボッ◯させたら……私のモノにしても良い?」


「おお、良いとも」


 って、いつの間にやら、とんでもないルールが……


「……という訳だから、昇太くん。覚悟は良いかしら?」


「えっ、えぇ~……」


「ショータ、そんな腹黒ビッチ相手に、絶対にボッ◯しないよね?」


 彼女と、そのライバルに挟まれて、俺は何だか冷や汗が止まらない。


「すごっ、マンガみたいなハーレム王って、本当にいるんだ」


 七野さんがのんきなことを言う。


「あ、佐伯ちゃん。もし、加瀬ちんNTR成功したら、あたしにもちょびっとおすそ分けして♪」


「おい、のぞみん。マジで絶交するぞ?」


 リナちゃんがドスを利かせて睨む。


「すまん、リナぱい。あたしだって、思春期真っ盛りのエロ女子。だから、時には友情よりも、性欲が勝ってしまうんだ」


「ちくしょう、この馬野郎めぇ!」


「いや、馬はおたくの彼氏でしょ」


「ショータは種馬じゃないもん!」


「ちょっと、お願いだからその辺にして!」


 俺は必死に叫んで、暴走する女子たちを止める。


 一方、その火種を巻いた張本人は、どこまでも余裕の笑みを浮かべて佇んでいた。







次回予告




「……あぁ~、そこそこッ……ショータくん、本当に上手ぅ~」


 可愛い彼女のためにも、絶対に浮気なんてするつもりなかったのに……


「すっご、もうダメ……意識が飛んじゃう」


 これってもう、浮気ですか?


「お願い……もっと強く、私のこといじめて?」


 かつて、散々と妄想したことが、今さら現実に……




 次回もお楽しみに!

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