第34話 ビーチタイム!

 思えばこの1週間は、ジワジワと暑いはずの夏に、なぜかゾクゾクと寒気がしていた。


 ただし、それは決して不快感から来るものではないことは確かだ。


「はい、夏休みの宿題、ほぼ完了ね」


 トン、トン、とノートを整える彼女。


「いやぁ、芽衣ちゃんのおかげだよ。ありがとう」


「では、清算のお時間です」


「はい?」


「何センチですか?」


 笑顔で小首をかしげて聞かれる。


「……指で示す感じでも良いですか?」


「ええ、良いわよ」


「たぶんだけど……これくらいです」


「…………」


「あの、芽衣ちゃん?」


「……ねえ、私、よだれ垂れていない?」


「はっ? いや、垂れてないけど……」


「……ちょっと、気持ちが落ち着かないから、今日のところはもう帰るわね」


「あ、うん。気を付けてね」


 芽衣ちゃんは意外とあっさりと、ご帰宅された。


 何だかんだ、大人な子だから。


 ていうか、ぶっちゃけ、ちょっと危なかった。


 もし、この2人きりの宿題タイムが、夏休みずっと続いていたら。


 俺の思考回路は、彼女に支配されていたかもしれない。


 それくらい、佐伯芽衣という美少女は、ヤバい存在なのだ。


 色々な意味でね。


 ピンポーン♪


「あれっ?」


 誰だろう?


 もしかして、芽衣ちゃんが忘れ物して戻って来たとか?


 けれども、インターホンの画面を見た時、すぐに別の人物だと分かる。


 俺は急いで玄関ドアを開けた。


「やっほー、ショータ♪」


「リ、リナちゃん……補習は?」


「無事に終わったよ♪」


 制服姿の彼女は、弾けんばかりの笑顔を見せてくれる。


 ちなみに、その胸元も弾けんばかりだ。


 パッツン、パッツンって、ボタンちゃんがぁ~……


「ていうか、その両手に持っている袋は……」


「おかちとジュース♡ 一緒に食べて飲も? あたちの補習完了記念に♪」


「うん、良いよ。入って」


「お邪魔しまーす♡」


 芽衣ちゃんといる時は、ずっとドキドキというか、ゾクゾクしていたけど。


 リナちゃんの顔を見たら、何だかホッとした。




      ◇




 夏、といえば、海。


 けど、実際には、なかなか準備して、そこまで行くのが面倒という理由でごぶさた、なんて人は多いと思う。


 俺もそんな感じだ。


 小学生の頃は、家族でよく行ったものだけど。


 中高生で海に行くのは、リア充くらいなものだと思っていたから(泣)


 けど、そんなダサ陰キャ寄りだった、俺が……


「海だああああああああぁ~!」


 弾けんばかりに魅力的な、ギャル彼女と一緒に海に来ているなんて。


 いや、彼女だけじゃない。


 魅力的な美女たちが、ズラリと……


「いやぁ、良い眺めだなぁ、ブラザーよ」


「ブラザーってなんだよ、隼士」


「えっ、だってお前、夏休み7月の1週間で、芽衣とセッ◯スしたんだろ? じゃあ、ア◯兄弟じゃんか~」


「いやいや、してないから。俺はお前みたいな浮気野郎と違って、リナちゃん一筋だし」


「そうかよ。ていうかさ……」


 隼士の視線の先には、ズラリと並ぶ美女たち。


 ギャル可愛くHカップの巨乳を持つリナちゃん。


「きゃっぽ~い♪」


 黒髪清楚で可憐、苛烈な絶対美少女、芽衣ちゃん。


「うふふ」


 さらには……


「わぁ~、ゆかっち水着姿かわゆい~♪」


「そ、そんな……リナ先輩みたいに、スタイルが良くないし」


「大丈夫だよ、ゆかっちはちっぱいの方が可愛いから」


「そ、そういうものですか?」


 リナちゃんのコンビニバイトの先輩かつ同じ学校の後輩、星宮由香ほしみやゆかさん。


「ふぅ、リナぱいには及ばないけど、あたしもここ最近、胸が成長しちゃった」


 リナちゃんの友人で、ソフトボール部の元気娘、七野希望ななののぞみさん。


「海だ~♪」


「アゲ~♪」


 リナちゃんのギャル友、トモエツこと、沢村朋子さわむらともこさん、結城悦子ゆうきえつこさん。


 さらには……


「はぁ……眩しいわ」


 何かちょっと、どんよりした顔で言うのは、クラス担任の篠原真琴しのはらまこと先生だ。


 ちなみに、引率&ドライバー役である。


 何でも、補習中に、リナちゃんが誘ったらしい。


 恐らく、半ば強引にだけど。


 とりあえず、総勢9人の大所帯で、海にやって来たのだ。


「てかさ~、男女のバランス悪くね?」


「だよね~、男2人に女7人とか……で、誰がどっちに行く?」


「とりま、リナのかれぴってデカ◯ンなんでしょ? じゃあ、あーしそっちが良いわ~」


「だよね、うちもそっちが良いわ~」


「って、あんたら、勝手なこと言ってんじゃないよ! ショータのチ◯ポは、あたしのモノなんだからね!」


「リ、リナちゃん、声がおっきいよ!」


「きゃんっ、ごめんね、おっぱい同様にデカくて♡」


「リナぱい、相変わらずアピールがあざといわ~」


「リナ先輩、羨ましいです……」


 女子って、やっぱりパワフルだよなぁ。


 これだけ人数が揃うと、やっぱり、ワチャワチャしちゃうというか。


 俺ごときに、果たしてまとめられるのか……


 その時、パン、パン、と音が鳴る。


「みんな、はしゃぐのは良いけど、ここはプライベートビーチじゃないから。他の人たちもいるし、ちゃんとマナーを守りましょうね」


 芽衣ちゃんが、微笑んで言う。


「「「「「「はーい」」」」」」


 女子たちは、素直に言うことを聞く。


「男子2人も良いかしら?」


「「あ、はい」」


 同様に、笑顔で、


 こうして、ドッキドキの(?)、ビーチタイムが始まった。




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