第33話 どれくらい?

 可憐に苛烈な芽衣ちゃんの存在により、俺は宣言通り、今までにないくらい、夏休みの宿題に集中していた。


「あの、芽衣ちゃん。ちょっと良い?」


「ん、どうしたの?」


「この問題が、分からなくて……」


「ああ、これは……」


 芽衣ちゃん先生が、分かりやすく丁寧に教えてくれる。


「ああ、なるほど。さすがだね、ありがとう」


「いえいえ、どういたしまして。けど、タダじゃないわよ?」


「えっ?」


「あとで、私の質問にも答えてもらうから」


「そ、そんな、俺ごときが、芽衣ちゃんに勉強で教えることなんてないでしょ?」


「誰もお勉強のことなんて言っていないわよ」


「えっ?」


「まあ、広義で見れば、それもまたお勉強だけど」


「は、はぁ……」


 ちょっと、頭が良すぎて、彼女が何を言っているのか分からないけど……


「こうして、芽衣ちゃんのおかげで宿題がはかどっている訳だし。ちゃんとお返しに、何でも答えるから」


「あら、そう? 嬉しいわ」


 芽衣ちゃんは微笑むと、再び問題集にペンを走らせる。


 俺も、少しでもその後に追い付くように、懸命にペンを走らせた。




      ◇




 それから、1時間くらい経っただろうか。


「あ、芽衣ちゃん。そろそろ、休憩とかどう?」


「ええ、そうね」


「じゃあ、ジュースでも……って、芽衣ちゃんは自前の飲み物があるのか」


「ええ、ちょっとホットになった、お水よ」


「はは。あ、お菓子は?」


「じゃあ、せっかくだから、少しだけもらおうかしら」


「うん、分かった」


 俺はいそいそと支度をする。


 ノートや問題集をどかしたテーブルに、ジュースとお菓子を置く。


「いやぁ、それにしても、ここまで夏休みの宿題が進むなんて」


「ねっ? 私と一緒にやって良かったでしょ?」


「う、うん。そうだね」


「そういえば、昇太くんのアレって、どれくらいのサイズなの?」


「へっ!?」


 俺は瞬時に驚愕する。


「あ、あれ? 俺、ちょっと宿題のやりすぎで、疲れたのかな? いま、ちょっと空耳が……」


「昇太くんのアレって、どれくらいのサイズなの?」


「…………」


 空耳じゃなかった~!?


「ア、アレって……何のことですか?」


「お◯ん◯……」


「わああああああああああああああぁ!?」


 こんな美少女にそんなこと言わせちゃいけないと、瞬時に防衛反応で叫んだ。


 いや、芽衣ちゃんがもう、俺らの何倍も経験のある、いわゆるビッチさん(元だけど)っていうのは知っているけどさ……どうしても、反射的に。


「で、どれくらいの大きさなの?」


 焦る俺をよそに、芽衣ちゃんは笑顔で問い詰めて来る。


「ど、どれくらいって……どう答えれば良いのか……」


「まあ、出来れば具体的なサイズが知りたいけど。手で表現しても良いわよ?」


「いや、そんなの自分のアレ、まじまじと計ったことないし……」


「じゃあ、里菜ちゃんに聞こうかしら?」


「それは……とりあえず、やめて」


「はい♪」


 クソ、これはもう、完全に笑顔の芽衣ちゃんに弄ばれている。


 この天使の顔した悪魔さんめ……


「う~ん、でもそっかぁ。照れ屋な昇太くんは、なかなか教えてくれないかぁ」


「そ、そうだよ。ほら、女子だって、そんな簡単に胸のサイズを教えないでしょ?」


「確かに」


 芽衣ちゃんは頷く。


 おっ、これは納得してくれたか?


「じゃあ、もう……浮気させるしかないか」


「…………はい?」


 俺は目をパチクリとさせる。


「ねえ、一度くらい、浮気の味……知りたくない?」


 こ、この子はなんて、とんでもないことを……


「……し、知らなくて大丈夫です」


「えっ? でも、その割には……何か、膨らんで来たかも♡」


「ふぁっ!?」


 いつの間にか、芽衣ちゃんがテーブルの下を覗いていた。


「いやん!?」


 俺はとっさに、女々しく股間を隠す。


「ふふふ、冗談よ♪」


「シャレになっていないんだよ……」


 さすがに、俺は少しムスッとしてしまう。


 すると、


「ごめんね、昇太くん。お詫びに、私の恥ずかしい秘密、1つ教えてあげる」


「恥ずかしい秘密?」


「うん」


 芽衣ちゃんは頷く。


「私ね、本当は……処女なの」


「はっ……?」


「まだ、奥の方が……でも、昇太くんなら、届きそうだから……奪ってくれる?」


「えっ……ええええええぇ!?」


 俺はまたしても、絶叫してしまう。


 いい加減、近所迷惑だから、自重しないといけないのに……


「何かね、私のアソコって、他の女子よりもちょっと、深いみたいなの」


「へ、へぇ……」


「で、ほら、私ってイケメン好きだから」


「ぶふっ!? あ、ごめん……」


「ふふ。で、イケメンって、だいたいみんな、小さいの。顔にエネルギーを割いているから」


「そ、そういうもんなのかな?」


「うん。隼士くんも例に漏れず、小さかったし」


 友よ……!


「でも、みんなだいたい、キスと愛撫は上手だったし。何なら、お金のある大学生は、アレを私のために、改造しようとしてくれたりして」


「か、改造……」


「でも、そこまで無理はしなくても良いよって。かと言って、アレが大きいだけの、ゴリラさんとエッチするつもりも無かったし……」


「お、おう……」


「でも、まさか、私が推して、大好きな昇太くんが、実はご立派さまだったなんて……もう、夢のようなの」


「は、はは。俺もいま、何か夢を見ている気分だよ」


 半ば、悪夢だけど……


「ふふ。だからね、経験人数は20人くらいだけど……奥はまだ誰も未達で処女なの」


「そ、そうなんだ……」


「だから、里菜ちゃんが羨ましくて。初体験の相手が、最高のアレを持っているだなんて」


「あ、あはは……」


「もちろん、昇太くんはアレだけじゃなくて、ぜんぶ素敵だけど」


「でも、俺はそんなイケメンじゃないよ? 芽衣ちゃん好みの……」


「そうかしら? だって、前から思っていたわよ。磨けば光る原石だって」


「そ、そうかなぁ?」


「で、いま正に、輝いているし」


「お、俺なんて、まだまだだよ……」


「で、何センチなの?」


「いや、言わないよ!?」


「うふふふふ」


 芽衣ちゃんはどこまでも楽しそうに笑う。


「はぁ、おかしい」


「本当にね」


「今日は、あわよくば、昇太くんのデカ◯ンをいただこうかと思ったけど」


「とうとう言ったね!?」


「でも、昇太くんとは、ただエッチするだけの、いわゆるセ◯レ関係にはなりたくない……こういう楽しい時間、少しでもたくさん、一緒に過ごしたい」


「芽衣ちゃん……」


「……私ね、後悔していないよ? 昇太くんが、私だけを見てくれていた時に告白しておけば良かったって」


 俺は黙って、彼女の言葉に耳を傾ける。


「むしろ、感謝しているの、里菜ちゃんには。あの子のおかげで、私は……ちゃんと、向き合う勇気が湧いたから」


「……そっか」


「うん。だから、全力で戦って、絶対に勝って見せるわ。その時は、昇太くんのおっきなそれで……私の奥底、ガンガン突きまくって?」


「め、芽衣ちゃん……その見た目で、下ネタを連発しないで」


「ごめんなさい。私、そんな良い子じゃないの」


「知っているけど……」


「うふふ」




※限定ノートにて『芽衣の日記4』を公開します。


https://kakuyomu.jp/users/mitsuba_sora/news/16817330654199989965



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