第6話 個人の気持ちの問題です
そうだよ、わかってます。個人の自由です。絶対に飲み物を注文しなくてはいけないルールはありません。お水を何杯も飲んでも構いません。
でもね、この街にはもっともっとバリエーションが豊富なパンケーキ専門店だってあるのに、何故、このお店を選んだの?
いろいろと考えすぎて僕は、何故か、感情が乱れてしかたがない。
・・・・・・
緑に囲まれ、小鳥がさえずり、小川が流れる美しい道を幸せいっぱいで歩いている。
ふと見ると先に犬のウンチが落ちている。みるみるうちに怒りがこみ上げてくる。
・・・・・・
人はどうしてか忌み嫌うものに心を奪われてしまうようだ。せっかく、たくさんの幸せがある場面なのに、たった1つの不幸せが気になってすべてを台無しにしてしまう。
僕が未熟なんだと思うしかない。これも笑ってみていればいいことじゃないか。
だから気にするな、放っておけばいいじゃないかと呪文のように唱える。
でも、駄目だ。気持ち悪い。気味が悪い。
一度気にしたら、もう駄目、止まらない。
早くパンケーキが出来上がってきてほしくて何度もキッチンを伺う。
「30番、パンケーキ、お願いします」
「はい!」
自分に落ち着けと言い聞かせながらもいつもより歩くスピードは速かった。
ヨーグルトを混ぜることで生地がしっかりと弾力を持ったオリジナルレシピのパンケーキ2枚が真っ白なお皿に乗せられ、ブルーベリージャムと生クリーム、たっぷりのメープルシロップが添えられている。
「お待たせしました」
ほら、お待ちかねの「ホットケーキ」が出来上がりました。このときばかりは嬉しそうな柔らかい表情をするだろうと思っていたのに、男性はすっとPCを手前に引いて、かろうじてパンケーキがおける程度のスペースを作っただけで視線はPCから外れない。
「ごゆっくりどうぞ」
僕の言葉を聞いた男性は、お水を一気に飲み干した。
「お水、頂戴」
目の前で飲み干したんだから、言われなくてもわかってます。そうでなくてもこのテーブルには頻繁に足を運んでいます。
「・・・はい」
返事さえ、一呼吸、遅れてしまった。
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