2.28

 ひとまず布団に入ろう。ストレスからか心身が停止を求めているようで、身体が怠いうえに異様な眠気がある。

 しかし寝るわけではない。私には覚悟を決めるという大きな使命があるのだ。呑気に夢現となるわけにはいかん。



「お眠りになられますか」


「にやん」


「呂律が回ってないようですが、大丈夫ですか」


「心配にゃおよにゃん。少しゅかれただけゃ」


「さいですか。飯が来たら起こしますよ」




 ……意に反して睡眠に移行しようとしている。脳か、脳の作用か。私の脳が余りある重圧から逃避せんとしているのか。寝るわけにはいかんのに瞼が言う事を聞かん。己が身体だというのに誰かに操られているようだ。このまま寝てしまって逃亡決行の時間に目覚めるなどとなっては大変だ。なんとしてでも意識を保ち反省とこれからについて段取りを立て、私の新しい人生について思案せねば。新しい人生だと! こいつ逃げる癖になにをほざくか! 生産管理がおざなりで工場の天然水飲用中販売会社。深層水に添加物がなくアレルゲンの温床は有機物質の温暖機構に赤道直下!




 ……





「ダンナ。飯が来ましたよ」


「……はぁ!?」



 ね、寝てしまっていた……結局支離滅裂な夢の世界へと没入してしまっていた……貴重な時間が、決意のための期間が、無為に……



「叫んでる場合じゃありませんよダンナ。熱いうちに食べちゃいましょう。入口に置いてってくれたみたいなんで取ってきます。その間に準備しといてくだい」


「……私はどれくらい眠っていた」


「三十分といったところかと」


「そうか」



 よかった、思いの外浪費はされていない。富士が起こしてくれたおかげだ。



「食事は私が用意しよう」


「さいですか。では、よろしくお願いします」



 身体を動かして、極力意識を飛ばさぬようにしなくては。そして食欲はないがせっかく用意されたものは感謝していただかなくてはならない。MOTTAINAI精神という日本的美徳を穢すわけにはいかんからな。

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