第5話

天国にはね、虹色にキラキラと輝くすべり台があるんだよ。

神さまのお迎えが来た赤ちゃんは、ママのおなかへと一直線に滑っていく。

数えきれないくらいたくさんのお友だちにバイバイした。たまに戻ってきちゃう子もいるけど。

ここにいると時間の感覚がなくなる。



「りく」

懐かしい声にどきっとして振り向くと、死神さんが笑顔で立っていた。

昔のまんま。なに一つ変わってない。

「しにがみさん、ぼくのことわすれちゃったのかなっておもってた」

「りくのことも男の約束も忘れる訳ないだろ。ほら迎えに来てやったぜ」

あのとき見たく真っ白な手を差し出された。

おっかなびっくりその手を受け取ると、すべり台のてっぺんまで連れていってくれた。

「パパは車の整備士。ママはコンビニエンスストアで働いている。お姉ちゃんが三人いる」

「おにいちゃんじゃないから、ちーくんやるーちゃんみたくママとパパにかわいがってもらえる?いらいっていわれない?じゃまだっていわれない?」

「あぁ。今度は大丈夫だ。俺が保証する。お世話大好き、面倒みのいいお姉ちゃんたちが三人、もれなくついてくるぞ」

「やった!」

嬉しくてピョンピョン飛び跳ねたら、死神さんに危ないよって注意されちゃった。


「しにがみさん、ありがとう」

「今度こそ幸せになれ」

「うん」

涙がボロボロと溢れてきて。止まらなくなってしまった。

死神さんがいつお迎えに来てくれるか楽しみだったのに。今はただ悲しくて仕方がなかった。

「しにがみさん、じいちゃんとばあちゃん、おねがいしてもいい?りくのために、ずっとほかのあかちゃんにすべりだいのじゅんばん、ゆずってきたんだ」

「任せておけ。新しい家族のもとにふたりをちゃんと送り届けるから」

じいちゃんとばあちゃんが笑顔で手を振ってくれた。

バイバイじゃない。

いつかまた会える。だから僕は大きな声で行ってきます。そう言ったんだ。

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