第3話 好き好き愛してる

「大好き、大好き、大好き、大好き、大好きです!愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています………………」


 後ろから呪詛のように愛の言葉をささやかれる。流石に不味いような気がするので急いで機能を復活させセリアに助けを求める。


『セリア、助けて』

『本当に申し訳ありません、主様。少々承諾しかねます』

『なぜ?』

『その方は、主様が助けた子でもあり、四賢人の一人であるリリシア様のご息女ですから』


 立場的なこともあって助けられずに歯噛みしているのか、悔しそうな声をもらす。


 けれど………


『ほんとに、すごく息苦しくて死にそう』

『……分かりました。今助けます』


「申し訳ありませんが、止めさせていただきます」


 そして、いつの間にか僕はあの子の抱擁から解放され、少し離れたところに下ろしてくれる。


「あなた。…誰?」


 僕を奪われて、目が段々と濁っていく。憎しみや恨みが積もり、殺意がたぎっている。


 対峙しているセリアと言えばそんな視線はどこ吹く風で、今は僕の体をぺたぺたと触り「これは、仕事、これは仕事」とか言いながら嬉しそうにしている。


 それを見てあの子は激昂し、何かをぶつぶつと唱え始める。多分、魔法の類だろう。


「はぁ……流石に、これは不味いので止めますか」


 やっと、僕を離し少女と対峙し、唱え終わる前に一瞬で移動し…


「ストップ」


 どこからか現れたきれいな、とても幻想的な女性が少女の詠唱を解除し、セリアの動きを止める。


ささめ。魔法を使っちゃダメって言ったわよね?」

「…。…でも」

「でも、じゃないわ」

「………ごめんなさい」

「そんなことでは、雪人君に嫌われてしまうわよ」

「え!?い、嫌です、嫌わないでください!!旦那様」

「え、っと。嫌いにはならないけれど」


 急に話を振られて、咄嗟に反応したが涙目の少女が一気にぱぁ―っと顔が明るくなったのを見て、なんだか安心する。


「紹介が遅れたわね。私はこの子の母親の四辻よつつじリリシアよ。これから末永くよろしくね。雪人君」

「えっと…はい。よろしくお願いします」

「それと……」

「はい」

「本当にありがとう」


 そう言って、いつの間にか僕の事を抱きしめ頭をゆっくり、優しく撫でてくれる。


「あの時、命がけで細の事を守ってくれて」

「……偶然ですよ」

「偶然でも自分が死ぬかもしれないのに、助けることを普通はしないのよ」

「それも、偶然です。…。…あと、少し苦しいです」

「あら、ごめんなさい」


 ゆっくり僕の事を離し…


「なっ!!」


 頬にキスをする。


「ふふっ。おまけよ。それにしてもあなたのって本当にすごいわね。近くにいるだけなのに、私でも少し興奮しているし、魔素関係なくなんだかあなたが可愛くてしょうがないの。母性が今、溢れているわ。んー、もうほんとに可愛いわ」

「ちょ、や、止めて下さい」

「止めません」


 また、抱きしめ、頬擦りをして身動きができなくなり、呆けていた二人も我に返り、リリシアさんを止めるのに必死になり、リリシアさんは僕の事を絶対に離さず、場がカオスになり、収集が着くまでかなりの時間がかかった。


 そのせいで、すっかり登校時間を忘れていたのだった。


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