第7話 エピローグ
「上出来じゃ。よくやったぞ、景虎」
「まぁ……俺にかかりゃこんなもんよ」
「減らず口を叩く余裕があるなら手伝え。この三人を儂の館に運ぶんじゃ」
「言わなきゃ良かった……」
「転移の術を使った後でじゃ。寝椅子に乗せるのは力仕事じゃろう。年寄りにさせるでない」
「都合のいい時だけ年寄り面しやがって」
「都合のいい時にせんでどうするんじゃ」
憎まれ口の応酬をしながら転移の術でその場から姿を消した。数分の後、誰かが通報したのだろうパトカーがサイレンを鳴らしながら走り回るのだった。
Eibonの館の中。新たに三つの寝椅子を出現させ三人を横たえた。館の主はグラスを出すと黄色い酒を縁ギリギリまで注いで一気に飲み干した。
「おいジジイ! いきなり酒飲んでんじゃねぇ! 一仕事終わったから一杯ってやつか!?」
「違うわバカタレが。これはバイアクヘーを呼ぶ為に必要な『黄金の蜂蜜酒』じゃ」
「胡散臭いなぁ……」
憎まれ口を他所に今度は石笛を吹き鳴らす。
「やっぱり宴会じゃねぇか!」
「やかましいわバカタレ! これも儀式なんじゃ!」
気を静めて呪文を唱える。
「 いあ! いあ! はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい! あい! はすたあ! 」
程なく奇怪な生物が飛来し、Eibonの指示で眠り続ける三人を乗せて飛び立った。上杉は想像を超える怪生物を目にしたせいか大人しい。
「どうした景虎。さすがに肝を潰したか?」
「う……うるせぇ。ちょっとビックリしただけだ」
「その反応だけで充分じゃ」
Eibonに笑われて憮然としている。気を取り直させるつもりか、Eibonは話題を変えた。
「あの最後の技、破壊では無く浄化と言える物のように見えたが」
「おお、分かるかジジイ! ま、あれも現代人の知恵ってやつよ」
途端に表情が変わる。切り替えは早いようだ。調子に乗ってネーミングは魔王尊が金星から来たという伝承をヒントに決めたのだとふんぞり返る。
「それはよく考えたな。じゃが……金星は明けの明星だったり宵の明星だったりと位置がバンバン変わるんじゃがの」
「……マジか。じゃぁ名前を考え直さないと……それと変身のポーズとかけ声も……」
「前途多難じゃな、戦い以上に。儂の占術ではあと三人の仲間が出来る筈じゃ。それまでに考えておくがええ」
「おお、なんか戦隊ものみたいだな! 急いで考えんと。あ、リーダーは俺な!」
「……好きにせぇ」
Eibonは寝椅子で水タバコを吸い始めた。アレコレとポーズを試行錯誤する上杉を眺めながら。
(お主はあの連中と戦い続ける使命がある。前世も来世もな。しっかりやるがええ)
不敵で気楽な少年は大声を張り上げて変身ポーズを試している。
「やかましいわバカタレ!」
「うるせぇ! こっちは取り込み中だ!」
賑やかなやり取りは今後も続きそうだ。
魔法少年 景虎 秋月白兎 @sirius1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます