夏川しおめ

第1話

 その壺は骨とう品屋さんの店先にずいぶん昔からあるものでね、人一人入れるくらいの大きさがあるんだ。

 二週間前の話、その壺に男の子がはいっていくのが見えて、売り物だから遊んだらダメだよって注意しようとおもって木のふたをずらそうとしたんだ。

 けど蓋はあかなかった。壺とつながってるみたいで、動く気がしないんだ。

 店主をよんで事の次第を話したさ。

 「この壺に子供が入っていったんですけど」

 「ええ? これに?」

 店主が蓋に手をかけても、やっぱりあかない。

 「見間違いじゃない? この壺、なんでか蓋があかないんだよ。あいてるところ見たことないし」

 よくもそんなわけのわからないものを置いているなと思うよ。

 店主はああ言うけど僕は確かに見た、子供が蓋を開けて入っていくところを。見間違いなんかじゃない。

 そのあと三日くらいは店の前を通るたびに蓋に手をかけたけど、もうやめた。もし今後あいたとして、その時にはもう死んでしまっているかもしれない。死体が日に日に腐っていくのを想像してしまったら、あの壺に近寄ろうという気さえ起きなくなった。

 



 

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夏川しおめ @colokke

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