休戦
二人が会話を続けていると、遠くから聞こえるサイレンの音が周囲に響き渡ってきた。
黒い男は素早く周囲を見渡し、その場から離れようとする。
すると突然ズィグヴァーンは黒い男に襲い掛かるように飛びつき、道路に押し倒していく。
「うわっ、足がっ!?」
それから黒い男の体を締め上げるように両手で固定させ、前面に覆いかぶさり続ける。
「貴様、何を仕掛けた? 流石の我でも体勢を持ちこたえられない攻撃だったぞ。でも見事だ」
「何もしてない! くそ、どけっ!」
黒い男は逃れようとズィグヴァーンの下で体を動かしていく。
すると、大きなサイレンを鳴らし、赤い照明で周囲を照らしてる一台のパトカーが近くで止まった。
ズィグヴァーンは黒い男の上から
「仕方ないな。さすがに覆いかぶさり続けるのも悪いからな。さぁ、自由の身だ。どこにでも行くがよい」
パトカーから素早く警察官が二人降りてきて、黒い男に駆け寄っていく。
「おいっ! お前たちなにやってる!」
黒い男はその場に立ち上がり、走り出そうとする。
「くそっ! こんなことで捕まってたまるか!」
「確保っ!」
「あがはぁっ!」
黒い男は警察官に突進され、地面に伏せられてしまった。
コハルは黒い男からズィグヴァーンに視線を移し、駆け寄っていく。
そして、赤黒く染まった腹部を凝視し、
「お姉さん、傷大丈夫? 血が出てるよ」
「それについては心配無用だ。これはただのケチャップだ。しかも濃厚な」
ズィグヴァーンは笑みを浮かべながら軽く手を上げる。
コハルは首をかしげながら、
「え、なんでケチャップ?」
「ふっ、我は次に襲撃する場所を見定めに行かねばならないため、ここで失礼するぞ。それでは皆の衆、夜闇に包まれて苦しむがいい!」
ズィグヴァーンは尻尾をくねらせながら後ろ髪を手で払いのけた。
そして不敵な笑みをコハルに見せたら体をひるがえし、静かな住宅街の闇に姿を消していく。
「はぁ……はぁ……はぁ、はぁ……」
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