いつもとは違う約束 会う場所も会う人数も会う目的も

 はぁーーーっと常盤はため息をつく。

「デート」として近藤を誘って、しかも拍子抜けするくらいあっさりOKされてしまった。あんなふうに誘うつもりなんてなかったのにと、後悔の念がもたげてくる。

 デートと口走ってしまったのは、静原って人のことが頭の片隅にあったからだ。そうじゃなかったら、あんなこと、言わなかったのにって思う。

 近藤も近藤だ。もう少し悩んだり、戸惑ったりするそぶりくらいしたらどうか。

 小宮が知ったらどう思うだろう。近藤との仲をよけいにこじらせてしまうのは避けたい。

 それならいっそのこと……。


「よしっ」


 常盤は小宮にラインを打つ。


〈16日って空いてる? 送り火見に行かない?〉


 いっそのこと小宮もその場に誘うことにした。文芸部のころのように、三人で出かけることにすれば角は立たない。近藤には「デート」と言ってしまったけれど、「二人っきりで」とまでは言ってないし、小宮が来ることになっても大丈夫だろう。

 小宮には近藤が来ることは伏せておく。もしかしたら近藤の名を出すと行くのを渋るかもしれないから。

 少しすると既読が付いて、すぐに返事が返ってくる。


大文字だいもんじ! 行く行くー!〉


 ちょっと前まではブラックバイト状態だった小宮だけど、今はだいぶ改善されたようだ。


〈ときちゃんのほうから誘ってくれるなんて、うれしーなー〉


 その後に続いてかわいらしいスタンプも送られてくる。

 ちなみに“ときちゃん”というのは、小宮が常盤を呼ぶときの愛称だ。呼ばれ慣れているはずなのに、文字面もじづらで読むと少しこそばゆい。考えてみれば、中学時代常盤はスマホを持っていなかったから、こうやって文章でやりとりすることもなかった。

 連絡を取るには、家の固定電話を使う必要があって。家族の前だからプライベートな会話はしづらいし、長電話はできないし、時間帯も限られる。

 改めて個人個人がケータイを持つってスゴい時代だなと思う。

 そんなことを考えているうちにスマホが震えて、ラインの新着メッセージが来たことを告げる。小宮かと思ったら、相手は柳澤先輩だった。

 常盤と会って話したいことがあるという、そんな連絡だった。




いつもとは違う約束 会う場所も会う人数も会う目的も

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