第6話 「買い出し」

 甘いものがこの世界にもあるんだな。

「いらっしゃい、何をお買い求めかな?」

 おお結構種類があるな。砂糖の塊やハチミツのアメ、ただの砂糖などこれは選ぶの難しいな。


「ではこのアメと砂糖の塊をそれぞれ20個ずつください。」

 そんなに買うのか!さすがに食いすぎたら口の中がずっと甘くなるぞ。


「こんなに買うなんてこれまた珍しい人もいるもんなんだねえ。」

 やっぱり珍しい人たちだと思われてる。だがすぐには腐ったりしないだろう。

「そこの女の子のために買うのかい?」


「ええこの子は甘いものが好きみたいです。ですからたくさん買っておこうと思いまして。」


「あらそうなの、こういう珍しいお客はあなたたちが初めてだからお金はいらないよ。」

 この店主優しすぎだろ。アメと糖分の塊をそれぞれ20個ずつ買ったのに無料とかやばいだろ。


「いいんですか?ではお言葉に甘えて。」

 こんなにいい人はずっと生きていてほしいものだな。だが必ず死は訪れる、生物なのだからこの宿命からは逃れることはできない。

「さて次の店に行きますよ。まだまだ買い出しは始まったばかりです。」

 おいおいまだ買うものがあるのか。


「私たちはまだおやつしか買ってませんよ?次は食材を買うんですよ。」

 そっかこれから長旅になるもんな、食材はたくさん買っておかないと途中で詰むしな。

 しかし人通りが多いな、ここは都市なのか?

「いいえここにいる人たちのほとんどが商人です。だから一般市民は少ないんですよ。」


「ここはコムコモコイーン商売街です」

 いわゆる商店街か。だからいろんな部類の店があるのか。

「お二人はここで待っててください。私は食材を買ってきます。」


 じゃあ俺たちはここのベンチにでも座って待っておこう。

「またふたりきりだね」

 そうだな。こうしてお前といるときが一番落ち着くんだが、今はとてもヒヤヒヤしているよ。


 ま、いざというときのために甘いお菓子を……ってもう食ってるし!

 こいつもう食ってやがる。どっから奪い取ってきたんだ?菓子ならあいつが持ってるはずだろう。

「ふう、つい色々と買ってしまった。すみませんお待たせしてしまって。」


 そんなに待っていないんだが、どれだけ買ったんだ?

「たくさんの食材があるのでしばらくは困ることはないです。さてもう行きましょうか。」

 特に何の用事もないしさっさと大陸の中央に向かうとしよう。


 この前見た地図通りだとたしか大陸の中央は雪山になっていたはずだが、防寒対策はもうできてるのかな。

「でも雪山は登りませんよ。私たちの向かっている遺跡は雪山の入口付近の洞穴に隠されてるらしいです。」


 それならよかった、凍えながら登るのはなかなかにきついからな。

 でもさ一度は仲が悪くなってもこうして一緒に旅ができてるってのも不思議だよな。

「そうですね。でも私がいつ裏切るかはわかりませんよ。」

 おいおいこんなところでそんなこと言うんじゃない!


 細めてた目を開いた時のこいつが一番怖いかもしれないな。あと口元も隠れてて分からんし余計に怖さを引き立ててるのか。

「だいぶ近づいてきましたね。もうそろそろで雪山ですよ、でもキミたちのことだ寒さ対策はできているはずでしょう。」


 だがもうそろそろで夜になろうとしているんだが、それでもまだ歩みを止めないのか?

 帆奈ももう疲れてると思うし今日はここまでにしたらどうだ。疲れていては余計に歩みが止まるぞ。


「なら一旦ここまでにして野宿でもしますか?」

 宿屋とかがないというのならそうなるな。こいつも断ったりはしないだろう。

「はんなはアユモと一緒に居れたらそれでいいよ。」

 やっぱ断らなかったわ。


「では今日は休みましょう。肉を焼きましょう、それを食べて寝る!」

 うーん帆奈は肉は食えるのかな?

「はんな、お肉だいすき!」

 それはよかった、なら肉を焼くのを手伝うとするか。火起こしはもうできてるな。


 あとは焼き続けていい焼き色になったら完成だ。自ら料理をする日が来るとはな、しかし料理は意外と楽しいかもしれない。

「美味い!いい火加減をしてますね。なかなか肉を焼く技術はいい腕持ってるんじゃないですか。」


 そこまで褒められると照れちゃうな。

「このお肉おいしい‼」

 そうかそうかよかった、帆奈ちゃんにも満足してもらえて俺はうれしいよ。

「おーい、ここにちょうどいい広さの洞穴がありましたよ。」


 おおこれはちょうどいい広さだな。でかしたぞ諷霊斬!

 ふう、今日も一日大変だったな。だがこの生活もなかなかに楽しいな。

 ん?雪が降ってきた。故郷の方でも雪がたくさん降っているのかな?


「さて入口を掘り返すしかないか。」

 なんか悩んでるな。な、なんだこれ!入口が雪で埋もれてしまっている‼

 どうするんだこれは。素手で掘るしかないよな、でもそのうち手が冷たくなって動かなくなるだろう。


 あ、そういえば俺は魔法が使えるんだった。

「あぁ、あの時使ったやつか。」

 うわーあたり一面雪景色…だな。ん?なんだあれは!見たことない遺跡があるぞ!

「あれこそが私たちの求めていた遺跡です。今のうちに入りましょう。」

 これであいつの変な薬の効果が治るのか。

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