第1章 第1話 朱音との接し方

「まだ、かえれないのね…」


ログアウト出来ない状態になってしまった朱音は、不安そうにしていた。鼎達は、そんな彼女とどう接するかについて、四苦八苦していた。


「カナエさん、子供の相手した事ないんですね…」


「その手のボランティアは避けてたから」


「ボクはセクハラしか能がないからね…」


桃香の発言を聞いた愛莉は、彼女に睨みつける様な視線を向けた。桃香は愛莉を視界から外しながら、朱音の世話について考えた。


「要するに誰一人子供との接し方が分からないって事だね」


「うーん…子供の世話は大変って事は分かるんだけど」


うんうん唸りだして悩み始めた3人を、朱音は不安そうに見ていた。それに気づいた鼎達は、慌てて心配させないように振る舞おうとする。


「えーと…朱音ちゃんは何が好きなのかな?」


「…ウサギはすきだよ」


「嫌いな動物は?」


「きらい…?みんなすきだよ」


嫌いな動物はなし、と言う事が分かったので、桃香は動物図鑑を用意した。好きなものが載っている物を見れば、少しは楽しい時間を作れると思ったのだ。


「そんなの見ても、つまらない」


「っ…」


図鑑では喜ぶ事はなく、桃香はがっくりと項垂れた。きっと喜んでくれると思ったのだが、つまらないと言われたのは割とショックだった。


「…それじゃ、私とアイリはログアウトの方法をシステムに詳しい人と調べてくるよ。桃香、朱音の事は任せたからね」


「朱音ちゃんに変な事したらどうなるか分かってますよね?」


「ちょっと、ボクを置いてかないでよ!仕事に協力するとは言ったけど、子守は別…」


鼎と愛莉はオフィスブロックを出て、その場に残されたのは桃香と朱音の2人だった。桃香はどうすればいいかわからず、気まずい雰囲気になってしまった。


「どうしよう…ゲームでもやる?」


「うん…」


「やった!どんなのが好き?」


「…なんでもいいよ」


今も不安なのか、朱音は桃香とそっけない態度で接していた。本来の彼女は明るい性格なのだが、仮想空間から出られない事で落ち込んでいるのだ。


「じゃあFPSで良いかな!ボク得意なんだ〜」


「きゃっ…何これ」


オフィスブロックからゲーム用エリアへと入った桃香と朱音の足元には、ライフル銃が落ちていた。桃香は既に同じチームの仲間と、戦闘の準備をしていた。


「桃香…その子は」


「いーから気にしない!早くやろう!」


「ちょっと…どうすればいいの?」


桃香は朱音に構う事なく、真っ先にバトルフィールドに飛び出した。朱音は物騒な雰囲気のアクションゲームの様子を見て、戸惑っているだけだった。


「さぁ…片っ端から撃ち抜いてやるぜぇ!」


結局、桃香は朱音を無視して数時間ゲームで遊んで、そっぽを向かれる事になる…

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