第3話 ポリスガールと晴明様
全速力で走っている途中、不快に感じるうるさい音が後ろから近づいてくる。はてと思った晴明は動かして後ろを向く。
「あなや」
バイクだった。晴明が見た未来の技術より遥かに上のものだった。何か言っているが、この都の規則を破っている可能性が高いだろうと彼は考える。
「これほど速いとは。式神を使うのも手だが、更に面倒ごとになるだろうな」
広告を出している飛ぶ箱もある。空を飛ぶ技術があるだろうと推測した上での結論だ。
「しかし何故悪人でもない私が追われる羽目に」
自分自身が法をおかしたわけでもない。何故というのが晴明の本音である。その一瞬の動きの鈍りが命とりとなる。
「これはっぶべ」
放たれた勝手に縛ってくれる縄で晴明の動きが封じられる。走っている最中だったので、前のめりに倒れる。支えるものがないため、顔面直撃である。コンクリートに近いもので出来た道なので普通に痛い。
追いかけてきたのは女性だった。未来の日本の警官姿に近いもので、彼女は俵を抱えるように動けない晴明を持つ。女性の言葉で野次馬の連中が去っていく。晴明はそのまま目を閉じて気絶した。
「んー? これは」
ふと目を開けたら真っ白い天井。ツルツルとしたもので、何か混ぜて出来たものだということぐらい、彼はすぐ理解した。首から足まで薄い掛け布団。頭には柔らかい枕(晴明は断じて認めないが)があり、傍に警官らしき女性がいたころから、彼女の職場の寝床だと推測した。
「○×△△」
彼女の口から聞き取れない謎の言葉が出てきた。晴明は必死に優れた頭脳を駆使しているが、理解まで至ることが出来ない。既に何度も通じない世界に入ったことのある彼にとっては慣れたものだ。こういう時は身振り手振りでやるしかないと。
「××〇△□」
彼女は晴明に科学技術の結晶体らしき薄い液晶の板を見せる。治安の悪いところで遭遇した男達の姿が写っていた。
「察してはいたが、私がいるところの未来のように便利なものがあるなぁ。見覚えがあると思ったら、奴ら何かやらかしたのか。となると……早とちりしてしもうたか。すまんな」
事情聴取をするつもりだったのではないかと彼は考えた。この世界の規則は知らないが、良くない事をしたぐらい、彼にも理解出来ていた。彼女の前で静かに頭を下げる陰陽師である。
「!?」
女性がワタワタと慌て始めた。それが原因か不明だが、どこかに行ってしまう。
「おーい。私を置いて行くのもどうかと思うよー」
置いてけぼりの晴明は警察組織と思わしきところにいるとは思えない程ののんびりとした声を出した。
「あのー……主様、私出た方がよろしいでしょうか」
謎の青年の声が清明の首元から発していた。右肩にもこもこと不自然に膨らんでいる。
「ああ。構わないよ」
晴明は微笑んで許可を出した。
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