第2話 スラムの地区へ

 やたらと賑わっているところがあったので、晴明はそこに向かった。巨大な映像スクリーンがあり、たくさんの人々が声をあげていた。日本語でもない。大陸の言葉でもない。全てを見通す目で習得した言語でもない。それでも応援の何かだと理解することが出来る。


「争い競うものだったか」


 スピードの出る乗り物で競うものだった。映像で水飛沫を見かけるため、水上に関するものだと彼は判断する。あと少しで終わるだろうと彼はすぐに去る。


「ほほぉ。ここの地図と言ったところか」


 大通りにある歩道に案内地図があった。映像として地図を映しているような形だ。区画できっちりと分かれており、細かい道がない。初めて来た者でも迷わないだろう。


「書物があるな。そこに向かおう」


 図書館に近いものだと彼はすぐに理解し、北東の地区に向かう。近道をするため、比較的幅が狭い路地も使う。実はこの都は一部治安が悪く、晴明が通る地区はそれに該当する。まあそういうことである。


「おっと。これは不吉な予感だ。見知らぬ優しき者が少し引っ張っていたのはこういうことか」


 入ってすぐに彼は感じた。土で出来た建物にはヒビが入っており、落書きらしきものがある。ゴミの散らばり。薬の中毒症状に陥っている若者の姿。寝そべっている小さい子供。ところどころ異なっているが、平安の都と変わらないものがそこにあった。


「ある意味ここは遅れている地区か。或いは上の者が」


 彼は思考を停止させる。護符を取り出し、簡易的な結界を貼る。何かとぶつかった音を聞き取った彼は撃った者を見る。タンクトップとズボンの厳つい男。手元にはハンドガンがある。空の薬莢と弾丸があることから、彼はある答えを導き出す。


「我々がいる時代よりも未来の飛び道具に近いな。しかし使いこなせていないと見た」


 狙いが浅いことが理由だ。晴明は静かに即席の呪符を投げる。触れた銃は粉々に。男は悲鳴をあげ、どこかに逃げてしまった。


「まあ。こういった力は差別されるものだな。ふむ。この足音は。ああ。理解した」


 たくさんの足音で彼は悟った。恐れはあるが、殺す気で仲間を呼んだらしいことを。実際そうだった。さきほどの厳つい男と雰囲気が似た者達が晴明を囲うようにする。銃と棒と短剣と。ありとあらゆるものを武器とし、彼を仕留めようとしている。


「相手するにも時間がいるな。逃げるか」


 術で身体を一時的に強化。晴明は避けまくり、地球のギネス記録をぶっちぎるような素早さで駆けていった。これが小さい子の陸上競技のきっかけになったという話があるとか、ないとか。

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