(二)-9

 すると、高野は笑顔で「じゃあ、そろそろ行くよ」と言って、席の真ん中にあるお盆のようなハンドルをぐるぐると回し始めた。

 何をするのか不思議に思っていると、やがて二人の乗ったカップの回転する勢いが徐々に増していった。隣のカップに乗っている小学校低学年の女児と父親が乗るカップの回転する勢いはと明らかに違い、二人のは格段に回転数が上がっていた。景色は凄い勢いで横に流れていった。

 そして時間が来て、全てのカップと足下の円盤が止まると、乗っていた客は一斉に降り始めた。もちろん園子たちも降りようとしたが、いざ止まってみると、園子が肉眼で見ている景色が、まだ上下左右にゆがんで居るように感じられた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る