第4話 寅の先生
東京は離れても 先生は大忙しであった
あちら こちら視察に 設計図を作ったり
寅はその間も豆腐を作り続ける
先生は神妙な面持ちで ぶつぶつ呟きながら
豆腐を食べている
無言である
寅も無言でその姿を見ていた
何か月かして にこにこ先生が帰って来た
”寅 きまったぞ ついに決まったぞ 豆腐をだしてくれ”
”良かったですねー 良かったですねー” 寅は繰り返した
”ついに日本の軍隊の建物が作れる”と先生
”へえ? 日本ってどこの藩だあ?”
”あはは そーだな” 先生は顎に手をあて
”一番北の端の藩から南の一番端の藩のぜーんぶを併せたもんだな”
”へえー? そんなもんかあ” 寅には良くわからないようだ
翌日お祝いの席を設けることになった
茶屋に何人か集まって 2階で祝宴が始まった
今日は豆腐は出さないらし
”寅もくるか?”
寅は少し考えて ”おれはここで待ってる”
先生は2階へ階段を上り 寅は階下で留守番
刻も過ぎ 夜も深くなってきた 祝宴は続いている
寅がうとうとしかけると 突然表戸が開いて
男がひとり入ってきた
”御免 先生はおられるか?”
”何か?”
”話があってお会いしたくてきもした”
”ちょっと まっとれよ”
寅は2階へ行き 先生にそれを伝えると
明日出直しいてきてくれということ
階下へ降りて寅はその男に
今日はもう遅いので 明日役所の方へ出直してきてほしいと伝える
”わかりもした”
男はぴっと戸を閉め出て行った
寅は身をひるがえし奥へ引っ込もうとする
すると突然 ”ばん”と表戸が開いて
何人もの人が慌ただしく駆け込んできた
寅はその音に振り返った時
切られた!
振り返ったところを 刀でさされ
さらに 袈裟に切られた
倒れこんでしまった
その横を何人もの輩が駆け抜け
階段を登ってゆく
倒れこんだ 寅は手をを階段の方に伸ばし
”せんせい” と叫んだ
2階の方が騒がしくなった
”せんせい” とらはもう一度叫んだが
それは声になったかどうか
わからない
寅の先生 佐々木 連 @cz9615
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