第6話




どこまでも行けると信じ繋いだ手。「あなたとならば闇夜も怖くないわ」敵に追われる姫はそう言い、愛しい騎士と逃げた。騎士もまた姫を愛していた。#twnovel しかしすぐ別れの時がきた。騎士は姫を守るため剣を手に敵に立ちふさがる。騎士の最期の表情は黄昏が隠したが、姫には分るような気がした。




まあるい透明な水槽で、優雅に泳ぐ尾の長い金魚。その鮮やかな朱色は確かに人々の目を魅了する。

けれど、私は美しくなくても構わない。行きたいところに行くフナでいい。灰色の鱗で泥水を飲んで泳いでいく。それが私だから。#twnovel 強がりに聞こえるかもしれないけど、あなたにはわかるでしょ?




大好きな先輩が長く美しい髪を痛々しいほどバッサリと切ってきた。その理由を友達には『失恋』後輩には『目標校合格の決意表明』先生には『猛暑に耐えかねて』とばらばらに答えた。#twnovel この中に真実はあるのだろう。けれど睫毛が落とす影が濃く切なくて。僕はその謎を解いてはいけない気がした。




下校途中に急な雷雨。あと少しで駅なのに不運すぎる。ぐっしょりと濡れた靴が気持ち悪い。仕方なくコンビニのひさしで雨宿り。私は前髪から滴る雫を見ながら、漫画なら、こんな時はヒーローが助けてくれるものだよね?と思った。#twnovel けどヒーローなんていやしない。私は雨の中、再び駆け出した。




下校途中に急な雷雨。仕方なく店先で雨宿り。全身ずぶぬれで気持ち悪い。私はシャツが濡れブラが透けているのに気付きうずくまる。どうしよう…#twnovel『これ使って』店の中から馴染みのない隣のクラスの男子が出て来て、上着を押し付け走り去る。雨が上がりの街路樹から滴る雨の雫が虹色に光った。




夏の終わり友人同士で花火を楽しむ。でも僕はあの子と友達以上になりたい。二人きりで線香花火をしている今が告白のチャンスだ。#twnovel 口を開こうとすると彼女が『線香花火の裏ワザ知ってる?』と僕の花火に火の玉をちゅっと押し付ける。「あっ!」すると大きな花火になってさらに燃え上がった。




今日は片想いの彼女と一緒の掃除当番。話すチャンスがあるかと期待したけど…話題がなく、黙々と掃除がはかどるばかり。そうじゃないんだ!趣味を聞いたり、映画に誘ったりしたいんだ!俺のこの気持ち、どうすれば伝わるんだ?#twnovel もどかしいホウキの筆で描くのは、君に伝えたい『I Love You』




『あのヘタレいつになったら自力で天の川を渡れるの!?』ぷんと頬を膨らます織姫。七夕にしか会えない彼氏がもどかしい。これだけの時間があれば、体を鍛えて泳ぐなり、大型船を作るなりできるんじゃない?と不満が募る。#twnovel それは自分も同じだけれど…彦星の想いを確かめたい乙女心の複雑さ。




さらさらと流れる笹の葉に願いを込めて、五色の短冊をつるす。楽しそうに飾り付けをする彼女を見ながら『君といつまでも一緒にいられますように』と僕は願う。#twnovel 君は何て書いたかな?僕と同じだったらうれしいな。『シャトーブリアンが食べたい☆』うん、君らしいね。バイト代を貯めておくよ。





扇子(せんす)が上品って言うけど、私は断然団扇(うちわ)派。特に浴衣の時は、腰に差して手ぶらで便利。しかも、絵が大きいから映えるよね。え、そんなのは女子力低いって? 何とでも言え! #twnovel 推しの微笑みが描かれた団扇と一緒に過ごす夏祭り。みんなー、同担で最高に盛り上がろうね!




ぷかりぷかりと薄暗い水槽に漂うくらげ。その姿は幽魂のように淡く光る。これに癒される?冗談じゃない。背筋がザワリとする。私は好きじゃない。#twnovel 『どうかした?』「ううん、別に」あなたの求めを拒めない私は考えることを放棄した、ただの抜け殻だ。あのくらげのように流されてるだけ。




子供たちが里山へ遊びに来る夏休みがやってきた!山でクワガタを捕まえ、沢で魚釣り。山を駆けまわり、小さな神社で一休み。楽しいね。永遠に続けばいいのに。#twnovel けれど、みんな気付いてしまうんだ。『君はずっと姿が変わらないんだね…』濃厚な緑陰が、いつも『僕』と君たちを隔てる。




『スイカ嫌い。当たりハズレがあるじゃない?』と頬を膨らます彼女。折角お得に買って来たのに残念。理由を聞くとカットしたスイカは甘いのと甘くないのがあってズルいとか。#twnovel 「じゃあ僕が魔法で全部アタリにしてあげる」スイカは中心部分が甘いからそこを均等に放射状に切るのがコツなんだ☆




つやつやの木の葉のハガキに、かわいい四つ葉のクローバーの切手を貼って、ちゅっとキスの消印を押しましょう。南風の郵便屋さんに、あなたに届けと託します。内容は言わなくてもわかるでしょう? #twnovel 『いつでも、どこにいても、あなたの幸せを祈っています』                   




夕日が沈むと、辺りは青い静寂に包まれる。その幽暗は、私を不安にも安らかにもする。一日の終わりを告げる安堵。盲目的な闇への恐怖。それでも、私はその瞬間を待ち望む。#twnovel 幽暗はあなたそのもの。本当の姿なんて知らなくていい。ただ、あなたに包まれて眠りにつきたい。




土砂降りの夕立で、制服どことか頭の先から靴までびしょ濡れ。こんな時に傘を持ってないなんて、まったくもってツイてない。帰宅後すぐにお風呂場にGO。熱いシャワーを浴びてる間に、湯船にはなみなみ温かいお湯がはられる。#twnovel ざっぶーん。あー、気持ちいい☆

湯気がもくもく。極楽極楽♪





国同士の長い争いが終わった。残されたのは、墓標替わりの剣の群れ。その数を数える者も時の流れと共に消えていった。剣の群れはやがて錆び朽ち、ざらざらとした赤い風だけが吹く。#twnovel 俺は体にまとわりつく錆びを払い立ち上がる。新たな戦場へと……。





それは見ると笑顔になります。

それはとてもやわらかいです。

それはとても温かいです。

それはとても甘いです。

それはとてもキラキラしています。

それはお金では買えません。

それは近くにあります。

それはあなたも持ってます。

#twnovel 

その名前は、誰もが知っています。





うねる群青の波間に巨獣を見た。あれは幼い日の幻だったのだろうか?嵐の夜、灯台を倒さんばかりに襲う白波を見間違えただけだと大人は言うがそんなはずはない。僕は確かに見た。赤く光る眼を、闇に浮かぶ爪牙を。あの化け物は子供の魂を食らうのだろう。#twnovel あの日から僕は海ばかり見ている。





ジリジリと日差しが暑くて体が溶けそう。温暖化ハンパない!ということで、友達に誘われかき氷を食べに来た。初めて来る店だ。山ほどかき氷を食べたいと言っていた奴らが、なぜかミニかき氷を注文する。なぜ??#twnovel しまった…大盛系の店だった!僕はどんぶりいっぱいのかき氷を食べ凍りそうだ。




もくもく白い入道雲。その中には子龍たちが住んでいる。「なんかお家が大きくなってきたね」「追いかけっこしようよ!」長い体をくねらせてどったんばったん。ポップコーンを取り合って大喧嘩。母さん龍に大目玉を食らいます。#twnovel 雷の鳴る空を見上げると、怒られている子龍の姿が見えますよ。





小さな神社の夏祭り。闇夜に赤い提灯がともる。カランと鳴る下駄の音。揺れる金魚の尾。甘い虹色の綿あめ。ドンとなるキラキラと降る花火を見上げ、つなぐ手と手。絡み合い少し汗ばんで、でも、放したくない。#twnovel あなたと過ごすのに、夏の短夜では、足りない。




残されたピアノを風が奏でる。愛しい愛しいあなた。泣かないで、悲しまないで。私は、いつもそばにいるから。空の雲に、雨の雫に、葉のさざめきに、海の波に。そして、星の瞬きに。#twnovel すべては、私からのあなたへの愛のメッセージ。




通学路に大輪のひまわりが並んで植えてある。暑さにダレて歩いているのを見張られているようで好きになれない。学校は嫌いじゃない。ただ平穏な日常のくり返しが退屈なだけだ。#twnovel 夏休みが明けるとひまわりは枯れ、うな垂れていた。変わらない物なんてない。僕は深くお辞儀をして前を通過した。




黒くドロドロした影に追われた。逃げても逃げても、闇は手を伸ばし俺を捕まえようとする。恐怖で喉から血が出そうなほど絶叫した。#twnovel 全て悪夢だ。目が覚めればただ奥歯を噛み締め一人寝ているだけだった。冷たい汗を拭い身支度をする。『悪夢は現実にならないわ』と言う彼女の言葉がお守りだ。




夏のにわか雨は嫌いじゃない。ザッと降り、すべてを洗い流す。暑さも、よどんだ空気も、私の頬を伝う涙も雨に混ざり流されて行く。#twnovel 雨上がりの磨かれた空気を胸いっぱい吸い込めば、目の前が少し明るく感じる。キラキラとした雨粒が虹を生み出ように、私のこぼした涙は何を生み出すのだろう?




昆虫の標本なんて気持ち悪いと思っていた。死んだ虫をピンで縫い留めるなんて悪趣味で僕には理解できない。#twnovel でも、君は虹色に光る玉虫や青く輝く蝶のことを熱心に説明してくれたね。これは研究であって遊びじゃない。死を弄んでいるわけでもない。無理解な僕を目覚めさせてくれたのは君だ。





庭のサルスベリに水をやる。樹には濃いピンク色の花が満開で青空に映える。他にもヒマワリやゴーヤにもホースで水鉄砲を食らわすと大きな虹が出来た。水やりという名の水遊びだ。「千夏ちゃん、お昼よぉ」祖母が冷え冷えのそうめんを用意して待っている。「はぁい」#twnovel 夏休みは始まったばかり。




暑さのあまり駆け込み入った喫茶店。エメラルドの炭酸水は、夏の日差しを受けしゅわしゅわと輝く。上に乗るバニラアイスをパクリと食べると、口の中は甘くてひんやり。ストライプのストローでごくりとソーダを飲めば口の中が弾けて楽しくなる。#twnovel クリームソーダが私に夏を好きになる魔法をかける。




<完>と打って物語を終える。3カ月書き続けた小説がようやく完成した。書ききった満足感と登場人物が自分から抜けて全て原稿の中に行ってしまった寂しさがまざり合う。#twnovel トントンと原稿の紙の束を揃えると、封筒に入れる。私は、どうかこの小説が入選しますように祈りを込めて投函した。




クライアントの急な呼び出し。先輩には『お前に任せた仕事だ』と一人放り出された。今は一生懸命やるしかない。#twnovel 遅く帰社すると机に、私のお気に入りの甘い珈琲缶がのっていた。小さな貼紙がある。『おつかれさま。ゆっくり休め』先輩の字だ。私は目に涙をためながら、その紙を宝物にした。




祭りはいつか終る。私たちは心のどこかでそれを知っている。知っているからこそ、囃子を奏で、声を上げ、共に踊る。#twnovel 夏祭りの喧騒の中、火照った体を風が通り抜ける。ああ、もうすぐ終わりを告げる花火が上がる。私には心地よい倦怠感と一抹の寂しさ。あなたの心には何が残ったでしょうか?



* * *


それは…のお話は、特に答えは存在していません。ごめんなさい。

みなさんがそれぞれ思い浮かべたものがすべて正解です☆


2022年7月にツイッターで行われた、文披き31題に参加して、毎日1話ずつ書いたものです。

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