アルマとの日常
「アルマ、早く起きないと遅刻しますよ。」
「もう少し⋯。あと5分でいいから⋯。」
この寝坊助は私と同室のアルマ・サピエンティアだ。
普段からこの様子だが、一応遅刻したことは無いらしい。
私が居ない時はどうしているのだろうか⋯?
「そうですか。それじゃあそう中佐に伝えておきますね。さぞかしこわーいお説教が待っていることでしょう。」
「わかった、わかったよ!起きればいいんでしょ!」
そう言ってアルマが起きるまでが私達のモーニングルーティンだ。
アルマの支度が済んだら、談笑しながら食堂へ向かう。
「そういえば、昨日講義で言われていた課題は終わったんですか?」
「もちろん!お説教だけは嫌だからね!」
「そのやる気をもっと訓練で出してくれればいいんですけどね。」
「それを言っちゃあダメだよマグナ君。」
などと2人で笑いながら話している内に食堂に着く。
私はパンとサラダ、豆のスープをいつも食べる。
アルマはソーセージと目玉焼き、そして大きな蒸しパンをいつも食べている。
「いつ見ても思うけど、マグナのご飯って質素だよね。もっと食べなきゃ筋肉つかないよ?」
「余計なお世話ですよ。それに、筋肉ならアルマより私の方があるじゃないですか。トレーニングが足りてないんじゃないですか?」
「マグナが鍛えすぎなんだよ!僕だって、他のみんなよりは力あるんだからね!」
知っている。アルマは確かに、他の同期と比べればずっと努力しているし、私はそれをよく知っている。
「それは失礼しましたね。何せ、自分より下は見ない主義なので。」
「いずれマグナを追い越して、僕が一番になってやるんだから!」
「それじゃあ、その時まで楽しみにしていますね。」
楽しい食事の時間も終わり、午前の講義が始まる。
朝は寝坊助なアルマだが、講義中に居眠りをしていたことは一度もない。
その点では、少し負けた気分になるし、アルマはひっきりなしにそれをからかってくる。
それでも、成績は私の方が上なのだが。
講義が終われば、次は訓練に入る。
基本的にはルームメイト同士で2人1組になり、隠密行動や、射撃訓練、格闘術の訓練に、フィジカルトレーニング等、日によって様々な訓練が用意されている。
志願兵として入ってきた同期達は辛そうにしているが、幼少期から孤児院で鍛えられた私やアルマは、むしろ生き生きとする時間である。
午後は基本的に講義はなく、ルームメイト以外の人間と模擬戦闘で、ペイント弾やラバー製の刃無しナイフなどを使って、実戦に近い形の訓練を行う。
1年を6シーズンに分けており、シーズン毎に成績の良かったものは表彰されるようになっている。
孤児院を出て、4年が経つ頃には既に私が1位、アルマが2位になっており、それから2年間、その座を譲ったことは一度もない。
ただ、ここ最近アルマが徐々に私に追いつきつつある。きっと、アルマは自分の得意な「戦略を練る」と言う点で戦い始めたのだろう。
その点、私は私自身の戦闘能力で押し切るので、チームの成績こそトップだが、チームメイト達の個人成績はあまり上がらない。
それ故に、アルマはよくチームに誘われているが、私はあまり誘われない。
というか、多分私の事が怖いのだろう。
無理も無い、2年前に中佐から狙撃を教わって以降、戦場では無茶をしなくなったが、それ以前はかなり荒れていた。
最近では「獅子も丸くなったものだ」などと言われるようになったが、それもこれも全て中佐のおかげだろう。
中佐には只管感謝しかない。
「マグナ!次の休み、南区行こうよ!露店がいっぱいあって、楽しいんだよ!」
「南区ですか。いいですね。私は行ったことありませんし、案内してくれますか?」
「任せてよ!僕は休みの度に南区行ってるからね!」
いつも思うが、アルマは一緒に居てとても楽しい。
彼女が私のルームメイトで良かったと、心の底から思う。
「その代わり、マグナが奢ってよね!」
こういうところは直して欲しいが。
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