第4話 二人の結論

初心者向け合コンへ何度か参加した。二人とも同性の友達が増えていき、合コン以外でも出会う異性も現れた。ミツルはアズミ。リョーカはハヤト。

何とか食事をして交流をしたが、話にはなぜか以前のパートナーのことが飛び出しては話が脱線していく。そのたび

「もしかしてミツルは、リョーカのこと引きずってない?」

「リョーカさんは元旦那を好きなのでは?」

お互い聞かれてしまうが「そんなことない」「じゃなければ離婚してないから」と切り抜けていた。お互いのパートナー候補から疑問を投げかけられるなんて、様々なことが抜け切れていない証拠だ。

心残りが解消されるまで、きっと幾度となくお互いを思い返してしまうだろう。

だがそれは新たなパートナー候補からしてみれば、別の意味としか思われない。

アズミとの食事を終え、がっくり肩を落とししながら帰宅するミツル。

だがミツルは家に入るときふと視線を感じた。目線をやると隣のマンションに住む元妻のリョーカであった。互いの姿を見てぽっかりと空いた穴が埋まるようにホッとしている。

ミツルは通路の端まで行くとリョーカに話しかけた。

「あれからどう?」

「う~ん、ぼちぼちでんな」

「下手な関西弁。ツバサのが移ったか」

「そっちこそどうなのアズミさんとは?」

「……別れた。今日な」

「そっか……実は私もダメになっちゃった」

ビル風が二人の間を吹き抜ける。

二人の中でお互いの存在が、大きくなっていることに気づいていた。でもそれは口にしてはいけない禁忌事項だと感じていたからだ。でも言葉に出して言いたい。もう一度言いたいことがある。

「「あのさ」」

二人同時に口が開く、お互い譲り合うが一歩も引かないダチョウ倶楽部状態。なので同時に話すことにした。もしかしたら同じことを思っていたかもしれないから。

「俺は、もう一度……」

「私は、もう一回……」

二人の声は強いビル風によってかき消されたが、言いたいことはお互いには通じていたと信じたい。


そのころ、新橋の串焼きが有名な居酒屋にて密談が行われていた。

「ホンマ世話が焼けるな、あの二人。セイジもそう思わん」

そう言うと焼きたてのもも串を頬張り黒ホッピーで流す。

「ツバサさんってば、こうなること知ってて、アプリ勧めましたね」

「セイジわかる?あんたに頼んでよかったわ。二人の結婚式のときにメッセの交換しておいてよかった」

「これからは、恋愛に詳しいねーさんと呼ばしてください!」

「いいよいいよ。今度はあんたの恋愛相談乗ったるわ!」

「よっ、ねーさん日本一」

今宵も様々な人々に沢山の大切なパートナーが現れますように。

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私たち三十歳ちょいちょい手前で離婚しましたが何か?──×があっても今時、焦るもんじゃないし、再婚目指てるんでよろしく── 水瀬真奈美 @marietanyoiko

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