第39話 隠した勇者パーティーの実力
「魔物はオークだな……数は三匹。もう少ししたらこちらに気づきそうだから、ここから叩く。支援魔法を頼むゼラ」
「はい! ジェノさん!」
ゼラが支援魔法を唱え、ジェノの身体能力が向上すると、ジェノはすぐに矢を射る。
ジェノが射た矢は、空に大きく弧を描き、オークに刺さる。
「ぐおおおぅ!」
オークは痛みで叫び声を上げると、慌ててまわりを見回して、矢の主を探す。
「ジェノさん行っていきます」
「気をつけろよ」
「はい!」
セーラは支援魔法を自分にかけると、オークに向かっていく。
オークたちは、矢の主を探しており、1匹のオークが叫び声を上げると、全員がセーラの方を向く。
(気づかれた! でも!)
オークは手に持った木の棍棒をセーラに向かって振り上げる。
「遅い!」
セーラはオークが棍棒を振り下ろす前に、さらに加速してオークの脇腹に拳を叩きこむ。
バキバキバキバキ
セーラの拳を受けた、オークの脇腹はろっ骨を粉砕され大きな音をあげる。だが、拳の勢いはそれだけでは収まらず、ろっ骨に守られていたいくつか内臓を破裂させ、致命的なダメージを与える。
オークは断末魔を上げ、そのまま血を吐き崩れ落ちる。さらにセーラは、倒れたオークが死んでなかった時のことを考え、さらに頭を踏みつけ砕き、とどめを刺す。
セーラの容赦のない攻撃を見た残りの二匹のオークは、恐怖で体をこわばらせる。そんなオークのスキをセーラは逃さず、容赦なく拳を叩きこむ。
飛び出した先ほどとは違い、確実にオークを殺すために振るわれたセーラの拳は正確に急所をとらえ、残りの二体のオークは断末魔を上げる事もなく地面に崩れ落ちた。
二体のオークは生死の確認をするまでもなく、セーラはオークの死体をマジックバッグに入れると馬車に戻る。
「問題なかったか? ゼラ」
「はい、問題ありませんでした。こちらは問題なかったですか?」
ジェノはセーラに返事をする代わりに、視線を向ける。
セーラがジェノの視線を追うと、そこには四体のオークの死体が転がっていた。
その死体は剣で一刀両断されたものが一体、魔法で殺されたものが二体、首の骨を折られたものが一体あり、セーラは馬車のまわりに残っていた冒険者の実力が高くて驚いた。
「それぞれ一撃で仕留められている……まるで皆みたい……」
純粋なセーラは一緒に魔王を討伐した、シュウダ達を思い出す。だが、そうでないジェノは疑いの眼差しで彼等を見ていた。
(魔物の気配に気づいた時思ったが……やはりこの四人、ランクの割に強すぎる……)
「これで今夜は美味い飯がくえそうだ」
「だね。オークの肉は美味しいもんね」
「私が腕によりをかけて料理するね」
ラーン、シュウダ、サイドはオークの肉を使って今夜の夕食が豪華になることに喜ぶ中、ハーゲンはジェノの視線を気にしていた。
(ジェノが我々を見ているな……少し力を出し過ぎたか? 疑い深いジェノは、かまをかけてくるかもしれない……後で皆に注意をしておくか)
「皆、オークの死体はすぐにマジックバッグに入れて進もう。ビルさんも待っているだろう」
「悪い、ハーン。少し浮かれすぎていたな」
「ハーンの言う通りだ、ビルさんを送り届けないとだめだもんね」
「オークは楽しみですが先に進みましょう」
そう言って四人は手早くオークの死体をマジックバッグに入れていく。全員がバッグに入れ終わるとハーゲンがビルの元に向かう。
「ビルさん、ジェノさん、ゼラさん、お待たせして申し訳ない。先に進みましょう」
「大丈夫だハーン。むしろこれだけのオークに襲われれば、もっと時間がかかるくらいだから気にするな。それに旅の行程は少し余裕を持たせてあるから心配するな」
「そうです、俺とジェノもオークを三体ほど倒しましたが、ハーンさん達も四体と戦ったにしては、時間が短いですしそれほど待ってませんよ」
「またせてしまったのではないかと心配でした。問題ないなら良かったです」
話しをおえると、再び全員で隊列を組み、ビルと馬車を護衛しながら進みはじめる。
「よし、今日はこの辺りで野営をする。皆準備をはじめてくれ」
「「了解!」」
オークに襲われてからは問題なく進み。ビルの予定していた場所まで来ると全員で野営の準備にはいる。
「ジェノさん少しいいだろうか?」
「ああ、ハーンか……野営の準備もおわったし大丈夫だ。なにかあったのか?」
「いや、問題はない。話したいことがあってなこれだ」
「なんだそれは?」
ハーンの手に持たれた鈴にジェノが首を傾げる。
「これは、魔物が近づくとなる鈴なんだ」
「そんなものがあるのか、知らなかった。もしや昼間のオークの時も?」
「ああ、そうだ。この鈴のおかげで魔物に気づけた」
「だが、あの時は鈴の音など聞こえなかったが?」
「ああ、鈴の音量も調整できるんだ。だから昼間は聞こえなかったんだ」
そう言って、ハーンは鈴を二回ほどならす。
鈴は明らかにその大きさに対して不釣り合いな大きな音を出し、他のメンバーの視線を集める。
「なるほど、これほど大きな音もだせるのか、便利だな。と言う事は、それを今持ってくると言う事は、今夜使うのか?」
「ああ、そうすれば全員でゆっくり眠ることができる」
「なるほど、それはありがたいな」
「それならテントの近くに吊っておく」
「ああ、頼む」
話しがおわるとハーゲンと入れ違いに、ドワーフの娘姿になっているサイドがやって来る。
「どうかしたか? ドワーフのお嬢さん」
「はい、実は私は料理が得意なので、お二人の分も一緒に作ろうかと思って」
「奇遇だな、俺も料理は得意なんだ。それなら一緒に作らないか?」
「いいんですか? ではよろしくお願いします!」
その日の夕食は、ジェノとサイドによる料理で全員が大満足するのであった。
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