第36話 シュウダは気づく


「まぁ、よく言えば天才……悪く言ったら……」

「どちらも天才ならいいんじゃないですか?」


 セーラの言葉をドワーフの男はあえて訂正しなかった。


「……まぁ、二人の目的は聖剣をなおす事だからどのみち会うんだ、俺の言ったことを覚えておいてくれれば良い……案内もするし、俺の師匠なら会わす事ができる。聖剣を見せてもらったお礼だ」


(まぁ、一応は忠告したことになるだろう……)


「「会わせてもらえるんですか⁉」」

「ああ、だがさっきも言った通り、師匠が聖剣をなおせるかは、わからないぞ」

「はい! ドワーフは、この世界で最も鍛冶技術を持つ種族、しかもその頂点の四人で無理になら、あきらめもつきます」

「わかった。なら、うちの国に向かうのは二日後で良いか?」


 聖剣がなおるかもしれないと知ったセーラは、すぐにでもドワーフの国に向かいたかったため、思わず聞き返す。


「二日後ですか?」


 明らかに、気落ちしたセーラの様子にドワーフの男は説明する。


「ああ、すぐにでも向かいたいのは、何か理由があるんだと思うが……ここでしか手に入らない物があるから、俺はこの町にきたんだ。だから、少し待って欲しい……」

「わかりました」

「なら、護衛依頼を出しておくから、ギルドの方で受けておいてくれ」

「護衛なら、私達がいますし、依頼料もいらないです!」

「ダメだ、仕事にはきちんと報酬を払う! それは、逆の立場であっても同じ。師匠に会わすのは聖剣を見せてもらった礼で、護衛は別の話だ、もし嫌なら聖剣の礼は他のものにする」

「ドワーフの方は、頑固者が多いと聞きましたが、あなたも頑固者なんですね。セーラ様しかたありません。依頼を出してもらって、報酬をいただきましょう」


 困った口調でジェノはセーラに言うが、ジェノの表情は嬉しそうにしていた。


(仕事への報酬は払うときも、貰うときも一切妥協しないんですね……)


「ああ、そうしてくれ。そう言えば名乗るのが遅れが俺の名前は、ドワーフのビルだ。よろしく頼む」

「私も正式に名乗っていませんでしたね。私は、人族の聖騎士セーラです。よろしくお願いします」

「私は、セーラ様のメイドのジェノです。よろしくお願いします」


 そう言って三人は握手をするのであった。






「さて、これからどうしようかな……」

「二人の後を追うんじゃないのラーン」

「二人が王宮から姿を消した理由がわかったから、姿を元にもどして二人に会えばいいのでは?」

「さっきは惚れなおしたけど、それはいけないよハーゲン。たしかに二人が姿を消した理由はわかったけど原因は、まだ解決していない」


 そう言ったラーンはちらりとシュウダを見る。


「まぁ、原因もわかっているけど、ハーゲンには教えられないからね。シュウダ、サイドちゃん三人で相談しよう。ハーゲンは悪いけどまっててね」

「なるほど……シュウダのスキルですね……わかりました。俺はまってます」

「ありがとうハーゲン。今回は、すぐに引き下がってくれるのはいい男だよハーゲン」


 そう言ってラーンは、ハーゲンに向かって投げキッスをする。


 ハーゲンが三人から少し離れると、ラーンが魔法を唱える。


「これでハーゲンには、声は聞こえない」


 ラーンがそう言うと、すぐにシュウダが口を開く。


「ねぇ、ラーンさっき理由と原因がわかったと言ったけど、原因って何なの?」


 シュウダの言葉に、ラーンとサイドが顔を見合せる。


「サイドちゃんなら気づいているよね? 説明してあげてくれるかな?」


 サイドはうなずくと、シュウダに話しはじめる。


「シュウダ様。先日聞きましたが、シュウダ様は女神様に、セーラの様の全身の毛を強固にしてもらったのですよね?」

「うん。以前に敵との戦闘中に髪を斬られちゃったから……」

「でも、髪だけでなく、全身にしたんですよね?」

「うん。だって、まつ毛や眉毛もそうした方が良くない?」


 シュウダの言葉にサイドは小さなため息をつく。


「サイド? どうしたの?」

「シュウダ様。今から少し厳しいお話をいたします。今回、セーラ様が王宮より逃げ出されたのは、聖剣にヒビが入ったからですよね?」

「うん、それはさっきわかったね」

「なら、聖剣がひび割れた原因は? 王宮内に聖剣で斬って、聖剣がひびわれるようなものがありますか?」

「いや、無いとおもう」

「私もそう、先日シュウダ様が女神様よりもらったスキルを聞くまでは……」


 サイドがそこまで言ってシュウダは、はっとする。


「まさか……」


 シュウダの顔色はどんどん青くなる。


「そのまさかですよ……いや、それしか考えれません!」

「そ、そんな……僕はセーラのためを思って女神様に願ったのに……」

 

 シュウダは、崩れ落ち、地面に両手をつく。ラーンはそんなシュウダの肩をポンとたたく。


「シュウダ、女の子はムダ毛が処理できていないと、大切の人に体を見せれないと思うよ、はね」

「魔王討伐を終えて城に戻って来たセーラ様が暗かったのはそのせいだと思います。シュウダ様……」


 シュウダはびくりと体を震わせると、ぽたぽたと涙をながすのであった。

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