第35話 セーラは見つかる


 シュウダ達は、町にある冒険者ギルドに着くと会議用の部屋をかりる。


「さて、どうやって確認しようかな……」


 部屋に入り、席に着くとラーンは天井をみながらつぶやく。


「そんな事を言いながらやることは一つでしょう」

「まぁ、ハーゲンの言う通りだけど……あまり、私達二人以外に知る人は多くな方がいいと思うんだよね」

「ハーゲン? ラーン? なんの話をしているの?」


 二人の会話にシュウダは何を言っているのか理解できず、たずねる。


「まぁ、魔法の力技かな?」

「魔法の力技? 魔法なのに力技なの?」

「まぁ、シュウダ、賢者二人の力技だ」


 そう言ったハーゲンはニヤリと笑う。


 ラーンとハーゲンは壁による。


「じゃあ、ハーゲン私が部屋の魔法を無効化するから、透視のほうはまかせるね」

「し、師匠。その役かわってもいいですか?」


 ハーゲンの言葉に、壁に手をついてたラーンは、おもわず振り返る。


「本当に良いのか? かなりしんどいぞ? それに失敗も許されない」


 普段の軽い態度とは違い、目を吊り上げて問いかけるラーン。


「大丈夫です……それに俺は何時までも弟子でいたくはないんです」


「……わかった、それじゃあ頼むよ」

「わかりました」

「シュウダこっちに来て壁にちかづいて」


 シュウダはラーンに言われるまま壁に近づく。


「ハーゲンがこじ開けてくれるなら、中の様子と、さらに声もいけるかもしれない……」


 いつになく真剣なラーンの独り言。


「いきます!」


 そう言ってハーゲンが魔力を練り、呪文をとなえはじめる。


「よし! こじ開けた! 次は、中の様子と声だ!」


 今度はラーンが呪文を唱えはじめる。


 すると、壁が透けて隣の部屋が見えるてくる。


「「⁉」」


 隣の部屋の様子が見えると、全員が息をのむ。


 隣の部屋には四人が探していた、セーラとジェノの姿に加え、ひび割れた聖剣があった。

 セーラとジェノは聖剣をはさんでドワーフと話をしている。


「くそっ! 結構な距離がある」


 ラーンがそう言うと、今まで透けていた壁が元通りになる。

 だが、壁の向こうの様子を見れなくなると同時に、声が聞こえてくる。


「お話した剣がこちらです」

「見事な聖剣だ。これを人族が作ったのは奇跡だな……」

「はい、人族にこれをなおす技術はありません。そのためにドワーフの方で聖剣をなおせる人を探しに……」

「なるほどな……そのためにドワーフの国に」




「これで確証を得れらね……」


 そうラーンが言うと、隣の声が聞こえなくなる。


「はぁ、はぁ……結構あぶなかった……」


 隣の声が聞こえなくなると、ハーゲンが膝をつき、肩で息をする。


「よくやったハーゲン」


「本当で⁉」


 膝をついているハーゲンのそばにラーンが近づき声をかけると、ハーゲンは嬉しそうに顔を上げる。その瞬間、ラーンがハーゲンに口づけをする。


「よし、皆これであの冒険者二人がセーラとジェノだとわかった。後は、今後どうするか」

「あ、ああ……それは良いんだけれど……ハーゲンは……大丈夫なのか? なにか魔法をかけたの?」


 何事もなかったかのように話すラーンだが、ハーゲンはラーンに口づけされたままの体制で固まっている。


「ふふふふ、思わずね。思わずハーゲンに惚れ直しちゃった」


 そう言って笑ったラーンの笑顔は妖艶なラーンらしくなく、まるで少女の様な笑顔であった。






 ギルドについたセーラとジェノは部屋を借りると、ドワーフと共に入り席につく。


「それで剣はどこだ?」


 単刀直入に剣の事をたずねるドワーフにジェノが待ったをかける。


「その前に、まずは謝らねばならない……」

「それは、魔道具のことか?」

「気づいていたんですね……」


 ジェノの言葉にドワーフは黙ってうなずく。それを見た、セーラとジェノは魔道具に魔力を流し、元のすがたとなった。


 二人の本来の姿を見たドワーフは、目を皿にようにしてこぼす。


「まさか、魔王討伐の英雄様だったとはな……と言う事は……まさか! なおしたい剣とは⁉」

「お話した剣がこちらです」


 そういってジェノはマジックバックから聖剣カイ・ジルシを取り出し、机に置く。


「見事な聖剣だ。これを人族が作ったのは奇跡だな……」

「はい、人族にこれをなおす技術はありません。そのためにドワーフの方で聖剣をなおせる人を探しに……」」

「なるほどな……そのためにドワーフの国に」


 そう言って、ドワーフは聖剣を手に取ると、その状態を確認する。


「魔王との戦いでか?」


 聖剣の状態を見たドワーフが視線を二人に向けてたずねる。


「あ、いえ。その……」


 ドワーフの言葉に思わずセーラが声をだす。


「まぁ、理由は何でもいい」


 そう言ってドワーフは聖剣を机に置くと、腕を組み目をつむる。


「なおせそうでしょうか?」

「……」

「ドワーフの方でも無理なんですか……」


 ドワーフの男が黙り込んだまま、動かない事から思わずセーラがつぶやく。


「正直、これを俺になおすことはできない」

「「⁉」」

「だがな……俺の師匠。いやドワーフ王国で頂点にいる四人の鍛冶師なら……できるかもしれない……だが……」

「その四人にあう事が難しいのでしょうか?」

「いや、会う事は可能だ……だが依頼を受けるかが怪しい……四人が聖剣に興味をもつか……そこが問題だ……さらに依頼をうけたとしても、問題がある……」


 そう言ってドワーフの男は頭をかいた。

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