第27話 依頼の完了


 ビッグボアを倒した数日後、セーラ達は目的の町に到着した。


「皆さん、ありがとうございます。皆さんのおかげで無事この町に到着することができました。途中、ウルフやビッグボアの襲撃にあいましたが、誰もケガをすることもありませんでした。いつもの事を考えると、とても幸運だったと思います。ギルドには完了の報告をしましたので、皆さんはギルドの方から報酬をもらってください。また私の依頼を見て、受けてもらえたら嬉しく思います。では、機会がありましたらよろしくお願いします。では私は宿に向かいますので、失礼いたします」


 そう言うと商人は、まだ昼でにぎわう町に消えていく。


「おい、ゼラ、ジェノ俺達もいく。お前達と一緒に依頼が受けれてよかった」


「こちらこそ、ありがとう。仕事だったけど楽しかったよ」


「ああ、こちらこそ一緒にうけれて良かった」


 セーラとジェノがそう言うと四人の冒険者達は、二人に握手を求める。それが終わると、リーダーの男は頬をかきながら話しはじめる。


「実は依頼の初日、俺達は二人にあまりいい印象を持っていなかったんだ」


 リーダーの男の言葉にセーラとジェノは目を丸くする。リーダーの男は二人のおどろいた表情をみてさらに続ける。


「まぁ、二人は出発の当日、しかも出発ギリギリに合流しただろう? やっぱり依頼の出発ギリギリに顔合わせなんてあまりないからな……だが、今はそう思っていない。と言うかむしろ色々勉強になって、二人には感謝をしているくらいだ。今なら何か二人がそうすしかなかった理由があると、想像できる……本当に今回の仕事は楽しかった。ありがとうジェノ! それに不死鳥フェニックスのゼラ!」


 そう言うと、冒険者達も町に消えていく。セーラは、彼等の姿が見えなくなるまで見つめていた。


「気持ちのいい奴らだったな。ゼラ」


「……はい。ジェノさん」


 ジェノが見たセーラの表情は少し嬉しそうで、それでいてどこか寂し気であった。


「それじゃあ、ギルドに報酬をもらいに行こう」


「はい、ジェノさん」




 二人はギルドに行き報酬をもらうと、旅の汚れを落とせるようにと、部屋に風呂のある宿にむかう。

 二人は受け付けを済ませ部屋に入ると、姿を変える魔道具をはずす。

 セーラとジェノは久しぶりに魔道具をはずし、おたがいの姿を確認すると、どちらともなく笑いはじめる。


「ふふふふ、久しぶりのジェノの姿を見て安心しました」

「ふふふふ、私もセーラ様のお姿を見て、安心しました」

「この部屋にいるときは、魔道具を使わずにいられますね」

「はい、セーラ様。辛いとは思いますが、どうか我慢してください」

「ええ、まだ先はながいんです、頑張ります!」


 セーラとジェノが久しぶりの本来の姿になり、話をしていると突然ジェノが目を丸くする。


「ジェノ? どうしたのですか?」

「それはこちらのセリフです! セーラ様こそどうなされたのですか⁉ ここまでの間にどこか痛めたのですか⁉」

「えっ⁉」


 ジェノの言葉に驚くセーラ。だが驚いたのはジェノで、セーラと楽し気に話していたはずなのに、突然セーラの目から涙があふれた。

 セーラ自身、なぜ自分が涙を流しているかわかるず困惑する。

 ジェノは、ぽろぽろと涙を流すセーラを姿をみて、ゆっくりと近づき、優しくセーラの頭を抱きしめる。


「ジェノ……?」

「セーラ様……辛い時は、泣いても良いんですよ」

「ジェノ……ジェノ、ジェノ、うえーん」

「大丈夫です、セーラ様すぐにムダ毛の処理もできるようになります」

「ムダ毛の処理……できるようになるかなー」

「ええ、きっとすぐに処理できるようになります」

「うん、うん、私……がんばります……うぅぅぅ……」


 セーラはジェノに抱かれたまま泣き続ける。


「ジェノありがとう……」

「セーラ様、せっかくお風呂のある部屋をかりたんです。一緒にはいりましょう」

「うん、ジェノお姉ちゃん」


(突然の妹モード⁉ んほぉ!)


「じゃあ、ジェノお姉ちゃん、一緒にお風呂に入りましょう」

「うん♪」


 セーラとジェノはそう言って部屋にある風呂に向かう。




「セーラかゆいとこはない?」

「うん、とっても気持ちいい♪」

「じゃあ目をつむってね」


 そう言うとジェノはセーラの頭に湯をかける。


「じゃあ次は腕をだして」

「うん、お願いします♪」


 ジェノはセーラの体を洗うと湯をかけ泡を落とす。


「さて最後は……もう一度腕をだして」

「……うん」


 そう言ってジェノが洗いはじめたのは、セーラの腕毛。


「……」


 ジェノがセーラの腕毛を洗う間、セーラは一言もしゃべらない。ジェノはセーラの腕毛を洗うために、改めてセーラの腕毛を見る。


「きれい……」

「⁉」

「あっ、ごめんね。セーラ」

「ううん、私も思っていたの……でも、処理できないと困る……」

「そうだね……」


 そう言ったジェノであったが、セーラの姿をあらためて見たジェノは思う。


(美しい、むしろ腕毛のない状態の方が不完全とおもうほどに……)


 ジェノが見たセーラの腕には、まさに冒険者達が言った、羽に見えるほどの腕毛がはえている。だがその羽はのある姿は、人としてはありえないにもかかわらず、ジェノは美しいと思ってしまう。


(セイレーンやローレライの様な魔物に男性が魅了され、殺されてしまうのはもしかしたら、このような気分なのかもしれないですね……)


 ジェノからすれば、ただでさえ美しいと思えるセーラ、今はさらに人は持たない羽をもったような姿は、まさに人を誘惑する魔物のように見えた。


「セーラ様の腕毛は髪と同じで、綺麗な金色のうえ、クシでとかしてもまったく引っかからないですね……」

「……」


 セーラはジェノが腕毛を洗い、クシでとかしている間、ジェノの言葉に反応することはなかった。

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