第18話 満天の星を見る者
目的の町を目指して、王都をたったセーラ達は、魔物に襲われるも特に問題なくそれらを退治し、初日の目的の場所に着き、そこで野宿の準備に取り掛かった。
その野宿の準備をするさいに、ジェノが夕食の料理について提案をする。
「聞いてくれ俺は、少し料理の腕に自信があるんだが、それぞれ夕食の食材を渡してもらえれば一緒に料理をしようと思うのだがどうだろうか?」
「なら、まかせたい。俺達は、料理が苦手なもので腕に自信があるなら、ぜひお願いしたい」
ジェノの提案に他の護衛の冒険者達は、もろ手を挙げて料理をお願いする。
「これは美味いな!」
「ああ、こんな美味い料理は、王都の中でもなかなか味わう事ができない! しかもこんな野宿するような場所で食えるとは思えないほどだ!」
「あんたは冒険者をやめても料理屋で飯がくえるな!」
「また、食材をだすからぜひ料理をしてほしい!」
「ゼラどうだい?」
「さすがジェノさん! とっても美味しいです!」
「あなたなら、王都でも料理人として引く手あまたでしょう! もしもその気があるならうちの商会経由で仕事をさがしてもいい!」
ジェノの作った料理はどれも、とても美味しいもので、護衛対象の商人も他の冒険者達も驚きの声を上げていた。
その後、夕食の後に夜の番の決めるさい、セーラ達は他の冒険者達から美味かった料理の礼に、負担の少ない一番はじめの夜の番を提案され、セーラの体調を気にするジェノがその礼をありがたく受けとるのであった。
「ゼラどうかしたか?」
火の番をしつつまわりを警戒していたジェノが、ぼんやりと夜空を見上げるセーラを見て尋ねる。
セーラが見あげる夜空は、一片の雲もなくまさに満天の星であった。
「いや、夜空が綺麗だと思って……あの人と一緒に見たかったなと……」
(今頃、シュウダは怒っているのでしょうか? いや、きっと怒っているでしょう……何も理由を説明しないうえに、聖剣を黙って持ってきてしまったのだから……)
「ああ、そうだな一刻も目標を達成し、すぐに王都にもどろう」
時を遡りセーラとジェノが城を出た頃
シュウだとサイドは二人一緒に部屋から出ていが、先にサイドがお茶の準備を持ち部屋に戻った。
先にシュウダの部屋に戻ったサイドは、セーラとジェノがいない事に驚き声をあげる。
「セーラ様? ジェノさん?」
もちろん返事はなく、部屋を見渡していると、シュウダの枕元に置かれていた聖剣が無いことに気づく。サイドは慌てて、部屋の中を探すが聖剣は見つからない。
その時、シュウダがお菓子を持って帰ってくる。
「サイドどうしたんだい?」
部屋に戻るとシュウダは、サイドが部屋の中で何かを探し回っていることに気づき声をかける。
「サイドどうしたんだい?」
その言葉にびくりと体を震わしたサイドは振りかえると、いつもと違う口調でシュウダに経緯を説明する。
「シュウダ兄ちゃん! 大変だよ! 兄ちゃんの聖剣カイジ・ルシがないんだ! それに……セーラ様とジェノ姉ちゃんがいないんだ……もしかしてセーラ様が兄ちゃんの聖剣を……」
「サイド落ち着いて……もしかしたらセーラが聖剣を振ってみたかったのかもしれない。落ち着いてセーラを探しに行こう」
そう言ってニコリと笑うシュウダを見て、サイドは落ち着きを取り戻す。
「失礼しました。シュウダ様の言う通りですね。セーラ様を探しにいきましょう……」
シュウダの言葉に落ち着きを取り戻したサイドはそう言って、シュウダと共に部屋を出る。
だが、二人が王宮内でセーラの行きそうな場所を探すがやはりセーラは見つからない。
王宮内を一通り探した二人は、シュウダの自室に戻って来た。
「シュウダ様、セーラ様はどこにいったのでしょうか?」
言葉遣いはいつものサイドであったが、その表情は青ざめており、それは時間が経つごとに色を濃くしていた。
「シュウダ様。少し部屋でお待ちください。私は、セーラ様を誰か見ていないか聞いてきます」
「ああ、お願いするよ。僕は、サイドが戻って来るまでここで待っているよ」
「では、失礼します」
それからしばらくして、サイドは王宮内で聞き込みをした後、シュウダの部屋に戻ってくる。
コンコン
「サイドです。シュウダ様、失礼いたします」
「おかえりサイド。セーラは見つかった?」
サイドは、シュウダの言葉を聞き、苦悶の表情を浮かべ、頭をふる。
「そうか……いったいどこに行ったんだろう……」
「シュウダ様、セーラ様なのですが、私の姉ジェノと慌てて王宮から出ていくのを見た者がいました……申し上げにくいのですが、話を聞く限り私達が席を外した直後に王宮から出たと思われます……きっと聖剣も二人が……」
セーラと一緒に王宮を出たのが、自分の姉であった事を聞き、サイドの混乱に拍車をかけていた。それにくわえ、セーラ達二人が聖剣を持ち出したいに違いないと思ったサイドはその事を口にした瞬間、心の中で抑えていたものがあふれ出した。
「ひぐっ!……セーラ様が聖剣を持っていく、な、ん、て……ひっく!……うぅ……姉ちゃんは……何を……して、いたんだ……」
涙を溢れさせたサイドを見て、シュウダは歩み寄り、優しく抱きしめ頭をなでながらサイドに言う。
「大丈夫、サイド落ち着いて。もし、本当に二人が聖剣を持っていったなら、きっと何か理由があったんだよ……僕らに言う事もできない理由が……きっと二人も辛かったに違いない」
「うぁああああ! シュウダ様~」
シュウダの優しい言葉が、サイドの溢れる思いを抑えていた最後の堤防を決壊させた。
それから数時間後、シュウダは腕の中で泣き続けた後に眠ってしまったサイドの頭をなでながら、シュウダはふと窓の外に視線を向ける。
「セーラ。君はどこに行ったんだ?」
シュウダはそう呟き、雲一つない満天の星を見ながら、セーラに思いを
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