第12話 指輪
「どうやら喧嘩はラーン様がおさめたようです」
「ジェノ、ハーゲンはいつもあの貴族の方と喧嘩をしているの?」
セーラに尋ねられたジェノが答える。
「いえ、いつもあの貴族の方と喧嘩をするのでではなく、先ほどの貴族の方が所属する派閥の貴族、と言うのが正しいですね」
ジェノの言葉の後に、サイドが補足する様に説明する。
「王宮内でハーゲン殿は、人気がありそれを妬ましく思っているそうです」
「では、私やシュウダもハーゲンの様にねたまれているのでしょうか?」
「セーラ様は聖騎士ですので、もしセーラ様と喧嘩をしようものなら教会が黙っていません。シュウダ様は言うまでもなく、世界に1人しか居ない勇者様ですし」
「僕も小さな嫌味を言われる事もあるけど、ハーゲンみたいに喧嘩にはならないね」
「貴族の方達は難しいですね……」
「そうだね、僕達も嫌われない様にしよう」
その後、セーラとシュウダ、ジェノにサイドの4人は夕飯まで話し込む。
「そろそろ、夕食にしましょうか。セーラ様、シュウダ、様食事はこちらにお持ちすればよいでしょうか?」
「ああ、そうだねこのまま僕の部屋で、食事を皆でしよう」
「では、ジェノさんと私で夕食の準備をしてまいりますので、一度失礼いたします」
ジェノとサイドが夕食の準備をするために部屋から出ると、セーラとシュウダの2人になる。
「今日は、楽しかったよ。また、ジェノさんと一緒に遊びにくてくれたらうれしいな」
「私もよ、シュウダ。また、ジェノと一緒に遊びに来るわ」
「今度は、ハーゲンにラーンも一緒に遊ぼう、さらに楽しそうだ」
「それは良い考えね」
「後は……2人だけで遊ぶのもいいと思うんだ……」
「……うん、それも楽しそうね」
「「……」」
会話が止まり、セーラは微笑みながらシュウダを見つめる。
「そ、そうだ。セーラにこれを渡したかったんだ」
そう言って、シュウダはセーラに近づくと指輪を渡す。
「これは?」
「これは、ペアになってて。これを指にはめて、魔力を流すと」
(聞こえる?)
(シュウダの声が頭の中に、それになんとなくだけど……)
(この指輪をはめてる2人は、念話で話せるうえにお互いの場所がわかるんだ)
(すごい……)
「実は、ラーンにお願いして作ってもらったんだ」
「さすが大賢者ね。でも、どうしてこれを作ってもらったの?」
「セーラといつでも話せるようにしたくてね」
「嬉しい」
そう言ってセーラは、シュウダを抱きしめる。
「セーラ……」
シュウダもセーラを抱きしめ返す。
「シュウダ……」
セーラはシュウダを見上げて、目を閉じる。
コンコン
「ジェノとサイドです。夕食をおもちしました」
「2人ともお帰り。どうぞ入って」
シュウダが返事をするとジェノとサイドが部屋に入る。
「お待たせしました。おや? お2人とも顔が赤いですが……」
「シュウダ様、もしかして部屋が少しあつかったでしょうか?」
「ああ、そうだね。少し部屋が暑かったのかも。ねぇ、セーラ」
「は、はい。そうですね少しだけ扱いもしれません」
「少し、空気を入れ替えてから、食事をご用意いたします」
その後、4人は食事を終え、再び会話を楽しんだ。
「セーラ様、そろそろお部屋にもどりましょうか」
「ええ、そうね。楽しい時は、すぐに時間がたってしまうわ」
「本当にそうだね」
「では、シュウダ様。私とセーラ様は失礼いたします」
「シュウダ楽しかったわ。また、遊びにくるわね」
「うん、また遊びに来て。待ってるよ」
セーラの自室に向かう途中、セーラは今日の事を嬉しそうにジェノと話す。
「ジェノ、今日はありがとう。ジェノに言われてシュウダの所に行って本当に良かったわ」
「シュウダ様も楽しいそうにされていたので良かったです」
「ええ、本当にありがとう」
そう言ってセーラは、右手の薬指にはめた指輪をさわる。
「あら? セーラ様、その指輪は? そんな指輪はされてなかったと思うのですが……」
「ああ、実は、ジェノとサイドが夕食の準備をしに行っている間にシュウだがくれたの」
「まぁ! それは良かったですね」
「うん、ジェノの言葉に従って、シュウダの部屋に遊びに行って、本当に良かったわ」
そう言って、セーラは笑顔をジェノに向ける。
「では、今日はお風呂に入って幸せな気分で眠れそうですね」
「……ええ、そうね……」
「セーラ様? どうかされましたか?」
ジェノはセーラの笑顔に、一瞬陰りが見えた気がして尋ねる。
「ん? 何が?」
「い、いえ。私の見間違いですね」
(セーラ様の悩みは、まだ解決していないのですね……まだ、話していただけないのですね……)
ジェノは、何でもない素振りをするセーラに、それ以上は聞かず何も気づかないふりをする。
セーラが自室に戻ると、部屋は綺麗にされており、後は風呂に入り寝るだけとなっていた。
「では、セーラ様。私は失礼いたしますが、何かございましたら、ベルを鳴らしていただければ、すぐに誰かがお伺いしますので」
「うん、何かあればベルを鳴らすわ。今日もありがとう。ジェノもしっかり休んでね」
「はい。それでは、お休みなさいませ」
ジェノはそう言って部屋の扉を閉める。
扉が閉まるのを確認すると、セーラは顔をそれまでの楽しそうな顔とは違い、少し悲し気なものになる。
「さぁ、お風呂にはいりましょう」
そう言って、着替えを持ち自室の風呂に向かうセーラ。
「やはり、今日も無理ですね」
セーラは、再び風呂場の中で、自分の愛剣レットでムダ毛の処理を試みるも、失敗に終わった。
「本当にどうすればいいのでしょうか……」
セーラはそう言うと、先日と同じく湯船に波紋をひろげるのであった。
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