第10話 王宮内の異変 1月21日 修正
「もしかしたら、王宮内に何か病の様なものが広がっているのかもしれません」
「病⁉」
ジェノの言葉にセーラ、シュウダ、サイドの3人が思わず声を上げる。
病と聞きサイドが執事の顔をしてジェノに尋ねる。
「ジェノさん、お2人はこのままでよろしいのでしょうか?」
サイドがジェノに守るべき2人をどうするか尋ねるとジェノは難しい顔をして答える。
「まだ、わかりません……今のところ命にかかわるような病ではないと言われています……」
「そうなんですか? ですが、それでもこのような雰囲気……その病の病状はどのようなものなのでしょうか?」
「まだ、はっきりとしたことはわからないそうですが……」
「「が?」」
普段は、理路整然と話すジェノが、話にくそうにしているため、思わず3人が声をそろえる。
「髪が抜け落ちるようです……」
「髪がですか?」
「はい、王宮に出入りしたり、または王宮内で政務を執り行う貴族の数人の髪が、突然ばさりと抜け落ちたそうです。そのため、王宮内に普段から居てるお医者様達がその貴族の方達の容体を調べられたようで……今現在調べ終わった髪の抜け落ちた貴族の方達の体は、健康そのものの様でお医者様達も首をかしげているそうです」
「確かに体質的に髪が抜けていくことはありますが、1度に全ての髪が抜け落ちるとなると体質的な話ではなさそうですね」
ジェノの話を聞きサイド、セーラとシュウダも思わず首を傾げる。
4人が首を傾げながら話していると、外から大きな声で罵り合う声が聞こえてくる。
「ん? 誰か口喧嘩でもしているのかな?」
「でも、この声はハーゲンの声じゃないですか? シュウダ」
「あ、たしかに言われてみれば、はっきりと聞こえないな……少しだけ扉をあけようか?」
そう言って、シュウダが扉に向かうとサイドが止める。
「シュウダ様! 万一の事があってはいけまえせんので私が扉を開けます! どうかそのままで」
「サイド、貴方はそのまま扉とお2人の間に立っていなさい。万一の場合は貴方が2人の盾になりなさい。私が扉を開きます」
そう言って、ジェノが部屋の扉を少し開けると声がハッキリと聞こえてくる。
「もう一度言ってみろハーゲン!」
「おや? 聞こえませんでしたか? 髪を全部お切りになるとは最近の流行ですか? とお聞きしたのですが、顔だけでなく耳までわるくなったのでしょうか? おっと悪くなったのは頭のほうでしたね」
「何が流行りだ! どうせお前が魔法を使い何か悪さをしたんだろうが!」
「王宮内で魔法や呪い? そんな事をすれば王宮に張られた結界が大音量で警報音をだすでしょう。そんな事もしらないのですか? それとも、耄碌されたんでしょうか?」
「言わせておけば!」
ハーゲンと罵り合いをしていた貴族がハーゲンに掴みかかろうとするが、魔王討伐のメンバーだったハーゲンはひらりと避ける。相手が歴戦の騎士や冒険者でもない限り、ハーゲンを捕まえる事などできず、貴族の手は空を切る。
そんな貴族をさらにハーゲンが挑発する。
「おや? ダンスですか? ダンスはご令嬢としたいものですな! あっはははは!」
「くそっ! ちょこまかと逃げ回りおって!」
2人の騒動を聞きつけ、周りにある部屋から廊下を覗く者達が顔を出しはじめる。
「また、あの方がハーゲン様に突っかかってるわ」
「いつも、ハーゲン様を目の敵にされてますわね」
ハーゲンと貴族の罵り合いを見る周りの人の数が多くなったころ、貴族の手が僅かにハーゲンの髪をかすめた。その瞬間。
ズルリ
「ああ! ハーゲン様の髪が!」
「ハーゲン様がご病気に!」
事態は一転し、賢者ハーゲンが病にかかったと大騒ぎになるが、ハーゲンの相手の貴族が病にかかり髪が抜け落ちた事を知っていた者達が声を上げる。
「あれは病だ! うつるぞ! 戸をしめろ!」
バタン! バタン! バタン! バタン! バタン! バタン!
誰かが言った言葉に、まわりで様子を見ていた者達が僅かに開けられていた扉を一斉に閉じる。
その様子見たハーゲンと罵り合っていた貴族がその様子を見て嬉しそうに叫ぶ。
「これでそなたも一緒だな
バーチン!
貴族の頭に赤い手のひらの跡が付く。
「手を出したな! ハゲーン!」
「お前の方こそ先ほどから手を出していただろうが!」
「貴様が私にからんできたのがはじまりだろう!」
「いつも私にからんでくるお前が悪い! この光の初級魔法頭が!」
「それは、お前も一緒だろうが! ハゲ!」
「ハ、ハゲ……私の名前はハーゲンだっ!」
2人の怒りは、最高潮に達し、ハーゲンは杖に、貴族は剣に手をかける。
2人が自分の武器に手をかけた瞬間、辺りを濃厚な魔力が覆いつくす。
本来言い争いをしている貴族は、魔力を感知する能力がないにも関わらず、その濃厚な魔力に気づき思わ口を呟く。
「こ、この魔力は⁉」
貴族がそう言った瞬間、廊下の奥からゆっくりとした足取りで1人の女性がやってくる。その女性は、王宮内にいるにも関わらず、豊満な肉体に薄い衣服を着て、男性を挑発する娼婦な様な姿をしていた。
とてもではないが王宮内に似つかわしくなく、本来であれば彼女は王宮から追いだされてもおかしくない姿をした女性なのだが、彼女そうはならず、さらには王宮内で知らない者がいないほどの者であった。
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