一章/6話 お嬢とお話

 僕は今、馬車に乗っている。

僕の他に2人、(あと御者の男の人も含めるともう1人プラス)1人はラメ。もう1人はライネリーの若い女領主……あ、名前聞いてないや。

「そういえば、領主さんの名前まだ聞いてないですね」

ラメも思い出したようだ。

「ああ、そういえば確かに自己紹介がまだでしたね。私はローズ・ミランダ・ライネリーです」

お嬢さん、ローズさんが言う。

「あなた達のお名前は?」

あ、確かに僕らの名前も言わないとね、相手がフルネームで名乗ったからこっちもフルネームの方がいいのかな?


「……えっと、……ぼく、……あの、」

ま、まあ緊張で声が出ないんだけどね!まじでやばいね!ラメどうにかして。

「私、ラメっていいます!こっちの小さい子がサクラくんです!」

わお、フルネームとか考えてたのに……まあフルネーム言ってなかったわ確かに……じゃなくて!小さい子って!


「おい」

「はい?」

「小さい子って……」

「ああ、なんかその方がわかりやすいかなーって」

ローズさんとは相変わらず緊張で話せないから小声でラメに文句言っとく。

「いやわかりやすいかなーじゃないよ、こっちはサクラ、でいいじゃん」

わざわざ小さい子なんて言わなくても。

「まあ終わった事は仕方ない!」

あ、あと、

「僕、サクラ・アイルーロスっていう、フルネームで」

「あ、たしかにローズさんはフルネームで言ってたもんね」

分かってくれたっぽい。


「えと、こっちの小さい子、サクラ・アイルーロスくんです」

分かってくれなかったっぽい。なんでわざわざ小さい子って(ry

「まあ、わざわざ訂正ありがとうございます!」

まあいっか


「そういえば、ラメはフルネームで言わないの?」

また小声で聞いてみた。

「まあ、えっと……ほら、私、『ラメ』がフルネームだから!」

絶対違うじゃん。

「えへへ、バレた……」

そりゃバレるよ。

「実は私…………」

うん、一体どんな理由が――


「――私、自分のフルネームを声に出すと死ぬ呪いがかかってるの!」

いやそうはならんやろ。

「まあ別にいいよ。何か理由があるんでしょ?」

「う、うん、ありがと!さすが私の親友!」

親友!?友達はまだ分かるけども……いや勝手に一緒に魔王討伐させようとする友達がいてたまるか。

「まあ、でも、うん、親友……か」

ちょっと良いかも――

「あら〜?どうしたの?照れちゃった?カワイ~」

――前言撤回。やっぱりこんな友達いてたまるか。


「そういえば、お二人はご友人なんですか?」

別に聞こえてた訳では無いと思うけど、ローズさんが聞いてくる。

「そうですよ!私達親友です!!」

だから違うって。

「え〜じゃあサクラくん私以外に友達いるの〜?」

も、もちろん!ラメは友達として数えないとしても……………さ、3人くらいはいるし!

「あ、えっと、なんか……ごめんね?」

やめて!なんか可哀想な人を見るような目でこっち見ないで!


「でも私入れて4人ってことは、私と会う前に既に3人いたってことだよね?まあでも私と出会ったのが今朝だけども」

そうだね、でもラメは友達として数えないから3人なのは変わらないけどね。

「ひどい!じゃあその3人ってどんな人なのよ!」

えーとね……

「1人は……長老さん……」

「おい!ちょーろーさんはノーカンだよ!」

なんでや一緒に遊んだことあるぞ。

「それは……保護者だからじゃないかな…」

だからその目やめて……!


「じゃ、じゃあ後の2人は?」

んーと……

「その2人のうち1人は音信不通で、もう1人は、ちょっと地位が上の人だからあんまり会えないんだよね。ていうか、前までは手紙書いたりしてたのに今はもうなんか届かなくなっちゃったし、こっちからから書いても返事こない」

あ、まってこれよく考えたら――

「――2人とも音信不通じゃん!」

確かに。


「じゃあまともな友達いないじゃないか〜ならやっぱり私がなったげるって〜」

はいはい、もうそれでいいよ。

「ほんと!?やったー!!」

そんなに喜びますか。……嬉しい…………


「ふふふっ」

そんなこと喋ってたらローズさんが笑ってる。

「ああ!ごめんなさい、うるさくして!あとこっちだけで話しちゃって……申し訳ない…」

ローズさんは首を横に振る。

「大丈夫ですよ。お二人とも楽しそうでしたし、仲良しでなによりです」

「ああ、ありがとうございます!」

仲良しって言われたからか、ラメが嬉しそうにしてる。まあ、僕も……

「ところで!私もお二人とお話したのでお友達ですか?!」

ローズさんが嬉々として聞いてくる。

「はい!そうですね!さっきは私達だけで話してたし、ローズさんともっとお話したいです!!」

ラメも嬉しそう。よかったね。

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