一章/3話 勇者は身長が低いらしい

「伝説の剣を携えた『勇者様』?ですか?」

予想外の言葉が飛び出してきた。

「そう!私の故郷で古い言い伝え?伝説?みたいなのがあってね、それによると…『世界が魔に支配されんとするとき、1人の勇者が現れ、魔を打ち払わん』ってやつなの!それでね、その勇者の見た目が、『身長が低く、桜色の長髪の少年』ってことになってて、『魔』っていうのは、近頃話題になってる魔王が現れたーとかのことだと思うの。それで勇者の方だけど、これってまるで君みたいじゃない?」

確かに、最近魔王が現れた、とか言う話を聞くようになった。(もちろん誰かと話して得た情報ではなく、人の話を盗み聞きしたんだけれども)

確かにそう思う。けど低身長っていうのは気に食わないぞ。

「本当に身長が低い勇者っていう伝説なんですか?なにかの間違いじゃなく?」

一応……聞いとく。

「うん!『身長が低く』って書いてあったよ!」

「そうなんですねそれじゃあ多分僕じゃないですそれ。ってことなのでさよな―――」

「待ってよ絶対君だって!だって君身長低いし君みたいな桜色の長髪の男の子なんてほかに居ないよ。身長低いし。」

2回言わないでくれ……刺さるから。

「ところで君何歳?12歳くらい?さっきから敬語だし…」

確かに、年齢言ってなかったか。このラメという人の方が何歳も年上っぽかった(身長僕より全然高いし)からつい敬語で喋ってた。まあでも初対面の人に年齢言うのかな?(あんま人と喋らないからわかんないや)

「僕は14歳です。誕生日は3月27日。ラメさんは?」

「あ、同い年だったんだ〜身長低いから年下だと思ってたよ、ごめんね?」

え、同い年?

「まじですか?」

「まじですぜ☆」

なんなんこの人なんか楽しそうなんだが。同い年なのにこんなに身長差あるのか……しかも相手女の子だし…………

「ま、まあほら、誕生日とか、私4月4日生まれだし、ほら、今日が4月2日で、明後日になれば私が年上だし!!」

そうなのか、いやそうでも1歳しか違いませんね何歳も年上だと思ってました。

「うん、なんかごめんね。これからは敬語じゃなくてもいいよ。それでさ、勇者の話、どう?」

それって歳が近い事がより強調されるのでは?まあそっちのほうが話しやすそうなのでそうさせてもらうけど。

「どう?って言われても……そもそもなんで伝説の勇者を探しているのかわかんないのだけれど……」

「あ、そうだね!その事についてなんだけど、2つ理由があってね、1つ目が、なんか伝説とか勇者とか魔王とか、冒険したりするんだろうし、絶対楽しそうだな!って思って!」

すごいなこの人。まあ確かに冒険とかしてみたいのは凄くわかる。(僕自身、この剣を持ってきた理由が「伝説の剣とかかっこいい!」だし)案外この人と気があったりするかも?そしたらこの人と友達になれたり―――

「でね、2つ目が、私家出してきたから、魔王ぶっ倒して親に私のこと認めさせてやる!!ってことにしたの!」

ごめんやっぱ友達は無理そう。家出って……本当になんかやばい人だな………

「あら?そういえばこの村って14歳から国の五大都市を回る旅をしないといけない掟みたいなのあったよね?」

「『大都市巡り』ってやつだね」

「そうそうそれ。さっきこの酒場のマスターに聞いたんだ〜んで、君は今何歳だっけ?」

うわー嫌な予感がする。

「14、だけど――――」

「それなら決まりだね、勇者くん!君は今から私と共に魔王を倒すべく、旅にでるのだ!あ、あと大都市巡りも忘れずに」

もうやだこの人怖い。急にわけわかんないこと言い出したんだけど。

「え?今から?ていうか旅に出ること自体嫌だが―――」

「君に拒否権は無い!あと掟は守ろう!ってことでレッツゴー!」

拒否権ない勇者ってなんだよ。いやまあ確かに勇者に拒否権はないか~ってなるか!

さすがに何も準備していなくては旅なんてできるわけが無い。

「わかったわかった。もうそれでいいから準備だけさせてよ」

そのまま運が良ければ逃げられるかも。

「おっけ〜ところで君のお家どこ〜?」

「え?来るの?」

「だって見張らないと逃げそうじゃん」

「……確かにそうなるか」

逃げるの失敗。いやこんな所で諦めてたまるか。僕は掟に反してでも平穏に暮らしてやる!

サクラは全力で走り出した。走力には自信があった。(人に話しかけられる度に逃げていたため)

――が、どんなにスピードを上げてもラメの声が遠のく気配がない。

「おーい、ほらやっぱり逃げるじゃん〜あ、もしかしてお家まで案内してくれてる?にしてはレディに配慮がなってないよ〜」

なんと、ラメは箒に乗って僕のスピードについてきていた。

「なんで急にそんなに魔法使いみたいなことしてるんですか?!」

「いや、そりゃあー魔法使いだからね私」

そっか、なんかごめん。そしてもう疲れた。

とりあえず何とか家に着いた、もちろんラメも。

「もうどーにでもなれー」

ものすごく無気力で旅の準備をしていく。

「やっとついてきてくれる気になったね!これからよろしく!」

死ぬほど疲れているこっちの事なんか気にせず、ラメが意気揚々と言ってくる。

「はいはい、それで?これからどこに行くとか決めてるの?」

無気力な割には支度が素早く済んだから聞いてみる。

「もちろん!まずは、その剣のことと、あと私がちょっと気になることがあるから、ここから近くの街に行くよ!」

「そこにこの剣に関係した何かがあるの?」と質問。

そしたらラメが自信満々に目をキラキラ光らせて言う。

「ふっふっふ……そこにはなんと…『世界一の刀匠』いるんだぁ!」

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