一章/4話 「行ってきます」と兄の記憶

 てことでラメと一緒に魔王を倒すべく、あと『都市巡り』を完遂するべく(僕としてはこっちが主題)旅に出ることになったわけだけれど、『世界一の刀匠』に会いに行く前に世界一の長老(笑)に会いに行かなけばならない。その長老っていうのはうちの村の長老なんだけれども、何が世界一かっていうと……

「すごくてきとーなんだよね、うちの村の長老」

「ふむふむ、とりあえずそのてきとーなちょーろーさんに『行ってきま〜す』って言うってことでしょ?」

まあ間違ってはないけども。

「まあてきとーっていうのは割と今の状況からしたらメリットかもね、僕はしたくないけど魔王討伐するなんて急に言い出したら、普通の村長とか長老さんだったら結構大変だったかも」

「まあとりあえず行ってみよ!」

魔王討伐なんてやりたくないって遠回しに言ったけどわかんなかったっぽい。まあとりあえず行ってみるか。


「サクラ、お主たち魔王討伐するんじゃって?」

わお、長老の家の扉開けて2秒で言われちゃったよなんでや。

「えあえ?そそそそ、そんなこことなないでですよっ、ね、さくまくん?」

いや誰だよってか焦りすぎでは?まあ確かになんで知ってるのかは気にな―――

「なんで知ってるかって?さっき酒場に居た連中がここに来て言ってきたんじゃよ、なんか魔法使いっぽい少女が大声で言ってたって」

確かに、そうじゃん。

「あは〜確かに〜…………」

あ、反省してる。

「ていうか!なんでサクラ君普通にちょーろーさんと喋れてるの!?」

そこかよ。まあそれは、

「うち、親いないから定期的にきてくれてたんだよ、だから嫌でも緊張しなくなった」

「え、嫌じゃったの?…………」

あ、ごめんそういうわけじゃないよ。

「それで?ちょーろーさん、サクラ君と一緒に行っていいの?あと『都市巡り』とやらもついでにやってくるけど」

「あ〜そんな掟もあったの〜」

「うわほんとにてきとーじゃん」

ね、それでどうなんですか?

「いいよ〜行ってきて」

わお、やっぱりてきとーだ……

「それにお兄さんも探せるといいのぉ」

確かに……

「え?サクラ君お兄ちゃんいるの?」

「いるよ、まあこの話は道中にでも話すよ」

今はめんどいし。

「じゃあ、とにかく気をつけて行ってくるんじゃよ〜」

はーい

「それじゃ、行ってきます!」


 そんなこんなで門をくぐって数分過ぎた頃、それまでは何も喋らなかったラメが急に聞いてきた。

「そういえば、さっきのサクラ君のお兄ちゃんの話なんだけれども……」

ああ、確かにさっきはすぐに話を中断しちゃったから、あんまり聞いちゃダメな雰囲気になっちゃってたかな?まあ実際さっきは言いたくなかったけど。

「うん、僕にはお兄ちゃんがいるよ、ていうかいたよ、なのかな?」

「え!ごめん!てことはもう亡くなって……あら?でもそしたら探すって言ってたのは?もしかしてちょーろーさんが認知症だからもう亡くなってる人の話を?」

わお、なんか答えなかったら長老のおじいちゃんがどんどん可哀想な立場に……!

「いや、多分生きてるんだけども―――」

「じゃあなんで『いた』って言い方したの?」

ああ、それは


「実はあんまりお兄ちゃんの記憶ないんだよね、なんか急に消えちゃって」


「ええ!記憶喪失?みたいな?」

そうそう

「いた、ってこと、『レフォルム』って名前、その人が僕のお兄ちゃんってことは覚えてるのに思い出が何一つ思い出せないんだよね」

あんまり人に話したことない事。だけどラメなら話せた。

「そっか〜まあ、思い出せるといいね!ていうか、これから旅が始まるんだし何かをきっかけに思い出せるよきっと!」

「そっか、ありがとね」

「ところでさ……」

ん?ほかになんかあったけ?

「なんでさっき話さなかったの?今日あった私が知らないのは当たり前だけど、ちょーろーさんには言ってないの?」

あ、確かにそこ気になるよね。

「うん、行ってない。だって昔から自分の孫?子供?まあそんな感じで可愛がってくれてたから心配するかなって」

「そっか、そうだね。まあ、とりあえず目標がもう1つ増えたってことで!」

なるほど、『都市巡り』と『お兄ちゃんの記憶を思い出す』って感じで2つになったね!

「いや、『魔王討伐』っていう大事な目標抜けてますが」

あ、やべ。

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