一章/2話 勇者と魔法使い
何とか家に戻ってこれた。でもこの剣、台座に刺さってただけだから鞘ないね…そういえば包帯みたいな長い布があった。とりあえずこれを伝説の剣(仮)に巻き付けてみよう。あといい感じに肩から掛けて背負う形にした。
そしてもう1つ、大事なことに気づいた。
「あ、結局朝ごはん食べてないよ〜」
なるべく人が少ない時間にパン屋にでも行って買いに行こうと(うちの村のパン屋は開店時間が早いのだ)思っていたけれど、
もう結構日が昇って、外は少なくない人数の人が出歩いているし、これではパン屋にも割と多くの人がいるのでは。
このままでは僕は朝ごはんを抜かなくてはならないのでは……それはまずい。
「しかたない、今の時間に開いてて、なるべく少ないお店に行ってみるかなって、そんな所あるかな……」
ひとつだけ、たったひとつだけ、思いついた。思いついてしまった……まあほかに選択肢なんてないし、行くしかないか……
朝空いてる店、すなわち夜が混んでいるところならいいわけだ。つまり
酒場、しかない……かな
わーお、最悪だ、なんでだ、なんで朝から酒飲んでる大人がいるんだよ……
「お、おはようサクラちゃん!子供がこんな所でなにしてんだい?」
坊主頭で色黒の男がこっちを向いて声をかけてきた。
こんな所で何してるんだってことにはほんとに同意。でもこっちは最終手段としてここに来てるんだよ。
なんか殴りたくなった。(まあそんな勇気ないんだけどね)
「それにその剣?どこで買ったんだい?おもちゃにしては重そうだけど」
わお、バレそうだー大変だー
っていうかよく考えたらなんで持ってきちゃったんだろう……なんてことより!やっぱり話しかけられても会話なんてできないよ!
頭が混乱して、本来の目的も忘れあたふたとしていると、謎のとんがり帽子の人物が謎の視線を向けてきた。
「……やっと、会えた…」
ん?なんか聞こえたような?いや気のせいか。まあ誰かがなんか言ってたとしても僕に話しかけてるわけじゃないと思うし―――
「……ふふふっ、あなた、名前はなんて言うの?」
「!?あえあっえっと、どどどどちら様でしょうか?」
緊張で声がうらがえっちゃった!じゃなくて!誰!?
心臓が早鐘を打つ。さっきの坊主頭の人は村の人だからまだ大丈夫だった(会話出来てないけど)けど、この人は知らない人だ。
とにかく首横に降っとこうかな?
自分の長い桜色の髪が踊るように振れるまでの勢いで首を横に振った。
「そんなに緊張しなくてら大丈夫よ♪なんだか面白い子が居るなーって思って声掛けただけよ」
…何故か分からない、けど、その優しい声がどこか懐かしく聴こえて、心臓の早鐘も鳴り止んだ。
「ねぇねぇ君って 男の子でしょ? なんで髪長くしてるの?ただの散髪嫌いくん?それともなにか深い事情が?ていうかその背中の剣はなに?ねぇねぇ―――」
「ちょっと!いきなりなんですか!第一、初対面の人にいっぱい質問されても混乱しますよ!!」
さっきの緊張がほぐれたおかげで、結構大きな声で(しかも初対面で)会話することができた。(やったー……かな?)
それより、初対面で僕のこと男の子だって分かったのか……
「あ!ごめんね自己紹介も無しに!私、旅してる魔法使いのラメっていいます!よろしく!!」
とんがり帽子を脱いだ女性、というより少女が言う。
「あ、はい。僕はサクラっていいます……」
僕も自己紹介した、が……
「へぇーそーなんだ!それでね!――――」
いや名前全く興味なしかよ。まあいいけども。
「私、伝説の剣を携えた『勇者様』を探してるの!!」
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