ペットと家族と人間不信と
ある日、父が動物園に連れて行ってくれたことがあった。ひよこからライオンまで、色とりどりな動物がいて、一日ではとても回ることのできない広さだった。
ボクは動物園が嫌いだ。檻の中で過ごしている動物を見て何が楽しいのか、子供ながらにそんなことを考えていた。動物達も一日中監禁され、多くの人の目にさらされる。きっと動物達はひどく恨んでいるだろう。
ボクには飼い犬がいた。小さいころから庭で一緒に遊んでいた。だがある時、気が付いてしまった、今していることは動物園と何も変わらないことに。エサを与え、庭という名の檻に閉じ込める、そのことに気が付いた瞬間、リードを外して犬を逃がそうとしていた。だが犬は逃げない。戻る場所が、ここ以外ないから。
その日のうちに犬を逃がそうとしていたのが親に嗅ぎつけられた。必死にボクの言い分を話そうとするが、「言い訳はするな」「命を大切にしろ」など、薄っぺらい言葉の数々が父親の口からどんどんあふれ出ていた。頭の仲が真っ白になり、ボクは家を出てしまった。子供だから意見を聞いてもらえなかったのか。色んな事から目をそらしていく、それが大人になるということなのだろうか。近所の公園のベンチに座り込み考えていると、気が付いた時には空から明るさが消え、辺りは灰色に染まっていた。
怒りが冷め、家に帰ると食卓には家族全員分の食事が置かれていた。
「すまなかった、話もロクに聞かないで。これからは気を付けるよ」
謝らなければならないのはボクのほうだよ。この言葉が出ることはなかった。なぜなら僕は気が付いてしまったから。犬にも帰る場所がここしかなかった様に、僕にも帰る場所はここしかないし、今こうしてエサも出されている。上っ面の謝罪なんて必要ない。
父親にとって僕は、庭で飼っているペットなのかもしれない。それに気が付いた時僕は、人を信じることをやめた。
ガラクタの寄せ集め。(短編集) 湊 笑歌(みなとしょうか) @milksoda01
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