ガラクタの寄せ集め。(短編集)
湊 笑歌(みなとしょうか)
酒と夢と子供と。
「僕が物語を考えて、君が絵を描くんだ、僕たちきっといい漫画家になれるよ」
そんなクサいセリフが近所の公園から、高い声で聞こえてきた。そんな甘い世界ではないと子供の夢を壊してやりたくはないが、実際漫画家になるにはすべてを捨てなければ生きていくことが出来ない世界なのだ。時間やプライド最悪なケース、稼ぐこともできないことが原因で親との関係だって捨てることになるかもしれない。それでも漫画家になれるのは、ほんの一握り。
今年で二十六歳を迎えるが、まだ出版されたこともないため、新人賞に向けて出版社に気に入ってもらえるような漫画を模索している。だが、今は正直スランプ気味で、漫画から少し距離をおいている。そんなことを考えながら机の上に置いてあるビール缶を口に運んだ。
はたから見ればダメ人間、時計に目をやると四時を少し回ったところだった。こんな姿を、さっき夢を語っていた近所の子供達が見たらどんな反応をするだろうか。俺は衝動的にカーテンを開け窓の外を見ると、一雨来そうな空模様だった。公園のほうを見ると子供達は何も気にせず、遊んでいた。自分にも無邪気に夢を追いかけ、放課後は公園に集まり友達と遊んでいた時期があったのかと考えていると、また声が聞こえてきた。
「自分の好きなもの書いてそれを仕事にできるなんて最高だよ、漫画家は!」
俺は一体何のために書いて、誰を喜ばせたいのか、それが分からなくなっていたのだ。自分の好きなものを書いて読者を喜ばせたいから漫画家になった。そんな一番初歩的で大事なことを忘れていた。机に散らばった銀色の缶をどかしペンを紙の上で走らせていく。出版社の求めているものではなく自分の思うままに、一番書きたい物語を。カーテンの隙間から差し込まれた光で、暗かった部屋が次第に明るくなっていった。外を見ると曇天模様だったはずの空には、夕日が照っていた。
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