第4話
光の先を目で追うとその光に反応して
一気に周囲が明るく光った。蛍だ!
「うわぁ!」
ジゼルから驚嘆の声が出た。
ロイはというと、まるでそれが自分のやったことかのように得意げな表情を浮かべた。
ジゼルが声を上げたと同時に周囲がまた暗くなった。
「あ!」
『ジゼルっしー』
ロイが静かに囁いて、ジゼルの目の前で指を立ててみせた。
ジゼルはバツの悪そうな顔をした。
ジゼルは蛍を知らなかったわけではない。驚いたのは、まさか、あの小部屋で過ごした時間がそんなに長かったことに気がつかなかったからだった。
静かにしているとまた所々からふわっふわっと優しく触れるように光が舞いはじめる。
『もう、そんなに時が過ぎたんだ。
私ってば、いつまでも過去のことに囚われて、
何もできないでいた。もう、忘れなきゃだよね。』
ジゼル囁くように言った。
すると、ロイがジゼルを向かい合わせにするようにぐいっと肩を両手で包むと引き寄せた。
ロイの物言いたげな瞳が蛍の光に反射してキラキラと輝いた。
「ジゼル、私は、あのとき、、、ジゼルが生きていてくれて本当に良かったって思ってます。
それは、きっと君のおばあさんも同じなんです。
だから僕は死の悲しみも忘れなくてもいいと思いますし・・・例えそれを忘れても
おばあさんに愛されたことは、忘れることはないです。
だからこそジゼル。生きてください。」
ジゼルはどこかで自分が立ち直るのに、おばあさんとの日々を忘れていくのが怖かった。
だからその思いが自分の中でまるで大きな癌となって、気持ちが動かなくなってしまっていたのだ。
しかし、そんなロイの言葉はジゼルの思いを幾分か軽くした。
そして、ジゼルの中で重かった歯車が一つまわりはじめた。
おばあさんの優しさに似た蛍のやさしい光が二人を包んでいた。
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