第71話 罪
もう、私の知りたいことはわかった。
私が社長の愛人になることを拒んだから……だから。それだけの理由。その行為が社長にどれくらいのダメージを与えたのかは不明だけど……社長にとっては耐え難い恥辱だったのかもしれない。
「さて……」私の話が終わったのを見て、
「なにを言っている……私は――」
「仮に
「……警察はな……」
「金で転びますか?」
それから
「それで……もしも社長が警察から逃げたとしても……私があなたを逃さない。私の唯一の友達を傷つけた罪は、重い」
そんな
……まだ私には、友達がいたんだな。すべてを失ったというのは、私の勘違いだった。なんでもっと早く、気が付かなかったのだろう。
「……」
車の中は沈黙に包まれた。そしてしばらくして、パトカーのサイレンが聞こえ始める。社長はすべてを諦めたようにうなだれていた。
私は……ただ窓から空を見上げていた。
……もう、私のやりたいことは終わってしまった。
「じゃあ……あとはお願いします」私がボーッとしているうちに、
そんな忠告をして、
……警察……ちゃんと社長を裁いてくれよ。そうじゃないと、社長がもっと危ない状態になってしまう。たぶん
社長を乗せて、パトカーが発進した。あまりにもあっけなく、あっさりとした最後だった。
もう、社長と会うこともないだろう。お互いが、お互いに関わる理由がない。
空港の駐車場。パトカーを見送ってから、そこにしばらく突っ立っていた。なにを話すでもなく、なにをするでもなく、どこに行くでもなく、ただただそこに立っていた。
風が私の髪を揺らす。天気はようやく曇ってきて、今にも雨が降り出しそうな天気になっていた。風が冷たくて、やっと私の心情を表すような曇天になっていた。
……
全部……全部終わってしまった。私の冤罪事件は
もう、
……これから私は、どうすればいいのだろう。どんな希望を持って、生きればいいのだろう。
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