第14話 きっと優しい人なんだと思います
私の話を静かに聞いていた
「なるほど……
そりゃそうだろうな。まだ出会って数十分だ。
「では……今から
「客観的な意見、ってことですか」
「そうなりますね。まぁ、僕が公平性を保てているかは疑問ですが」そう前置きして、
思わず、ため息が出そうになった。
――きっと優しい人なんだと思います――
結局、当たり障りのない肯定だった。何度かもらった言葉だった。まったく実感のない、まったく響かない中身のない言葉。全肯定するなんて言っても、結局はこのザマだ。
私が悪いんだよな。褒めるべきところがないから、薄っぺらい称賛しか浴びることができない。
やっぱりお金をムダにしたな……なんてことを思っていると、
「
本当だろうか。この人なら、助けに行きそうだけど。それとも、優しいのは仕事上だけなのだろうか。
それにしても……私の視野が広い? そんな事言われても……
「それに、その視野の広さは物理的なものだけじゃない。精神的にも視野が広くて、結果として相手のことを深く考えることができる」……精神的な視野? そんな言葉は、はじめて聞いた。「さきほどこの喫茶店の前で……女性たちが絡んできましたね。そのときに、
そんなことない。そんなことない。私が弱いから、声が出なかっただけだ。そんなことを言われたって私は……
「出会ったときもそうでした。あなたは男たちに詰め寄られていましたが……それでも相手のことを気遣っていましたよね」違う。そうじゃない。私は……「あなたは……とても深く物事を考えられる人なんです。だから、結果として言葉が出なくなることもある。それを短所だと捉える人もいるかも知れませんが……僕は
「あ……安心?」
「はい。
……
「そんな
……
……
「この喫茶店に入ったときも……
言葉の途中で、
「す、すいません……」なぜか
「え……」
どうしてそんなことを思うのだろう。どうして私が不快になったと、
その謎は、すぐに解けた。
「あ……」いつの間にか、私は泣いていた。テーブルに涙がたれて、ようやくそのことに気がついた。「あ、あれ……なんで……」
袖で涙を拭うが、涙はとめどなく溢れ出してくる。自分が泣いている感覚もないのに、涙だけが溢れ出てくる。
なんで私、泣いてるんだろう。意味がわからない。悲しいことなんてなにもなかったのに……
「ご、ごめんなさい……」震える声で、なんとか謝罪する。「なんで私……あの……深いってわけじゃなくて……その、逆で……」
逆……そうだ。喋りながら、ようやく自分が泣いている理由がわかった。
私は、嬉しかったのだ。
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