第24話

 アレステーヌ王国とカスリーン王国との間で勃発した……ごく一部の人間だけが興味をしめした戦争。 

 アレステーヌ王国側の方がカスリーン王国よりも圧倒的に兵力も少なく、物資もないような状態であったが……それでもアレステーヌ王国が完勝してみせた。


「……まさか、勝ってしまうなんて」

 

 アレステーヌ王国の王城。

 そこにやってきたカスリーン王国からの使者と和睦を結び、平和条約を結んだエミリア様……彼女は講和会議を終えてからもまだ現実を受け止めていられないのか、ありえないと言った表情を浮かべ、呆然と呟いていた。


「ふふん!僕の作戦勝ちだよ!」

 

 エミリア様の執務室。

 そこにいるのは僕とエミリア様だけである。

 なので、僕も一切の外聞を気にしない態度で口を開く。


「……本当に、凄まじいのね」


「当然。言ったでしょ……?僕はこの国を救って見せるって、さ。これでカスリーン王国から多額の賠償金と毎月の食糧援助を受けることが出来る。ひとまず、少しばかり現状よりもマシになるよ」

 

 今回の戦争でカスリーン王国軍の主力は壊滅。

 やろうと思えばアレステーヌ王国軍がカスリーン王国の領土に侵攻し、首都を落とすことさえ可能な状況であった。

 

 本来、こんな状態での和睦となれば大幅領土変更は当然なのだが、アレステーヌ王国側は領土変更をしない代わりに多額の賠償金と毎月の食料援助を約束させた。

 賠償金も食糧援助もかなりの量であり、アレステーヌ王国の飢饉はほぼ解決したと言っても良いだろう……僕が大量に要らない人間を処分したことも相まって。

 

 だが、その代わりにカスリーン王国側が悲惨ことになり、餓死者さえも出るような状況となってしまうだろう。

 いつかはわからない……だが、確実にこの数年以内に再度、カスリーン王国はアレステーヌ王国に侵攻してくるだろう。

 しかし、数年もあれば十分だ。

 その間に僕が緑の革命を成し遂げ、アレステーヌ王国の食料状況を大幅に改善させ、工業にも力を入れて強国化させる。

 そして、アレステーヌ王国をこの世界という盤上の駒からプレイヤーへと進化させるのだ。


「……」


 僕の言葉を受け、エミリア様がしばしの間、沈黙する。


「ねぇ……一つ、聞いていいかしら?」


「うん。何?」


「……私の国の、民衆を捨て駒に使ったのはわざと?本当は……彼らの犠牲なしでもこの戦争、勝てたんじゃないの?」


 少しばかり、ためらいながらのエミリア様の質問。


「うん。そうだね……彼らの犠牲なしでも完勝出来る。プランはあったよ」


 その質問に対して、僕は笑顔で肯定した。

 

 

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