第23話
互いに向き合う僕とおっさん。
「シッ!」
最初に動き出したのはおっさんの方だった。
僕よりも遥かに大きな体躯を活かしての一歩で僕へと迫り、半ばで折れた剣を振るう。
「……」
そんなおっさんの動きに合わせるように僕も動き、両腕の短剣を振るう。
僕が狙うは敵の剣を握る利き手である。
「……」
ドワーフ製の短剣の切れ味は抜群……いともたやすくおっさんの腕を手首から斬り落とす。
「ッ!?」
「……」
そして、僕はそのままおっさんの首元を狙って短剣を振るう。
僕の持つ短剣がおっさんの首を落とす……よりもおっさんの蹴りが僕の腹に当たる方が早かった。
「ぐふっ!?」
僕の軽い体はおっさんの蹴り一つで簡単に吹き飛ばされ、宙へと僕の体が持ち上がる。
「シッ!」
宙を舞う僕を狙っておっさんが地面へと落ちつつある剣を蹴り、僕の首を狙う。
「ほいッ!」
それを僕は短剣で剣を真っ二つに斬り裂くことでなんとか危険より逃れる。
「ふぅー」
宙から地面へと落ち、そのまま地面を転がった僕はすぐさま体勢を整えて立ち上がる。
「……なるほどなぁ」
僕を蹴り一つで飛ばしたおっさんは地面に落ちている己の腕と剣を拾ってそのまま立つだけで、僕を追撃してこようとはしない。
……やっぱりこのおっさん、カスリーン王国の人間じゃないな。
「カスリーン王国にあったドワーフの短剣……その流出元はお前だな?ドワーフのメス」
「そうだねー」
僕はおっさんの言葉に頷く。
「ったく。お前があんな劇物流出させるから、こんな辺境に俺が出張ることになったんだ。必要なことだったとはわかるが……自重しろよ?既に世界はこの戦争に……いや、お前に興味津々だからな?」
「……僕はまだ人間社会について勉強中なんだ。勘弁してほしいね」
未だに僕は世界情勢のすべてを勉強出来たわけじゃない。
僕が勉強したのはここらへんの情勢と世界情勢のほんの上澄みだけ……まだ複雑な世界情勢に飛び込みたくはない。
「いいさ。どうせお前がプレイヤーとなるのはまだ先だろ……そのための今回の戦いだろうしな」
「……」
おっさんの言葉に僕は笑顔で返す。
「出来ればお前さんとは味方になれるように願っているよ」
「僕もそうなることを願っているよ」
その言葉を最後に、おっさんはサクッとこの場から離脱してみせた。
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