第11話
「だから、僕としてもこの国に仕え、餓死しないようにしたいんだけど……そもそもこの国自体が駄目そうじゃん?普通に仕えていても餓死しちゃいそうな感じでしょ?」
「……そう、ですね」
僕の言葉にエミリア様が頷く。
「だから、さ……僕を重要な役職につかせてよ。僕が餓死しないためにも、この国を救ってみせるから。ふふふ伝説に語られるドワーフの力を見せてあげるよ」
ここに来る前、僕は本屋の方に行ったり、街に歩いている人に聞いたりしてドワーフについてどういう認識なのか、どういう風に考えているか。
調査してある。
そこで得られた結果を簡潔に書くと、ドワーフは万物を生み出す伝説上の種族であると語られており、もし、ドワーフがこの国に降り立ってくれたらすべての問題を解決してくれるだろうと答える人まで居た。
……なんか、ドワーフが引きこもっている間に現実からかけ離れたとんでも種族になっているけど、この状況は僕にとって好都合であった。
「……」
僕の提案。
それを聞き、エミリア様は黙り込む。
急に投げつけられたあまりにも多すぎる情報量を飲み込み、どう返答するか考えているのだろう。
「……あなたが、ドワーフであるという証明はないでしょう?先程、あなたの言った通り。私たちはあなたが他国の間者であるという可能性も考えています。あなたは今、自身が伝説上のドワーフであるという証明を私にしていない。つまり、現状であなたがドワーフであるという証明は出来ないのでしょう?」
沈黙の末、ようやくエミリア様が口を開く。
「うん。そうだね」
僕はエミリア様の言葉に頷く。
「でも、それが何か問題?どうせこのまま手をこまねいていても国は衰退していくだけ」
「……」
「他国の間者かもしれない……だが、今。君の目の前に座っている少女はこの国の救世主かもしれないんだ。流石にドワーフが現実に存在してくることくらいは知っているだろう……?ドワーフ製の武具だって幾つか人類社会にあるし、ちょいちょいドワーフだって人間に接触しているし」
「……えぇ。そうですね。ですが、あまりにもリスクが……」
「ハッハッハッハ。守るべき民が餓死しているという現状より下になることなんてないだろ。たとえ、僕が他国の間者でこの国を支配するために動いており、この国が他国に支配されるとしても……民としても餓死しなくても良い可能性が出てくる分マシだと思うぜ?強制労働と餓死。どちらが辛いかはわかるんじゃないか?この国に住んでりゃ」
「……ッ」
「良いか?為政者ってのは薬も毒もすべてを飲み干し、使いこなしてこそだと思うぜ?さぁ……どうする?王女さんよぉ」
「わ、私は……」
「あんたは俺という毒を飲み干し、飢餓に苦しむ民を救うために行動するか……それとも、このまま手をこまねき続け、民を飢え続けさせるか。どっちか選べよ」
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