第4話
ジメジメとした森の中に漂う血と鉄の匂いが漂い、剣と剣のぶつかる音と人の叫び声が響く。
「くっ……!貴様らッ!何者なのだッ!」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「ヒヒヒ……どうやら貴族様はこの世界に盗賊が蔓延っていることも知らないらしい。お前らが無能なせいで俺たちが苦しんでいるって言うのにさぁッ!!!」
「なッ!!!我らが主を侮辱する気かッ!」
「当たり前だろォ!!!」
「誰のせいで俺らが……ッ!俺らがこんなことしていると思っていやがるッ!」
僕が聞こえてきた声をたどりに駆けつけてきたところ。
そこは盗賊と思われる一団と貴族が乗っていると思わられる馬車を護衛している騎士たちが激戦を繰り広げている場所であった。
「ほっと」
良かった……とりあえずは奴隷商人とかのように僕を捕まえて売り飛ばそうとする人たちではなさそう。
後は守られている貴族が良い人であるかどうかだけど……ここは勇気を出して一歩踏み出すべき時だろう。
僕を捕まえ、欲望の限りを尽くそうとするようなゲスい貴族であったなら逃げよう。
戦っている騎士も盗賊もそこまで強くなさそうだし。
「だ、誰だ……ッ!?」
「子供?」
突然木の上から戦っている彼ら、彼女らの前へと降りた僕を見てその場に居た全員が首を傾げる。
「さてはて……貴族と思われる皆さん?」
僕はそんな彼らを見て口元に笑みを浮かべ、口を開きながら腰につけているポーチよりドワーフ製の短剣を二本取り出し、手元で回す。
……短剣って言っても大人サイズなので、僕の小さなボディで考えたら普通の剣と同じくらいの大きさなんだけど。
「小さな少女の助太刀は必要かな?」
「えっ……ぁ」
「……プッ。アッハッハッハッハッ!」
僕に話しかけられた騎士たちが言葉を詰まらせ、問いに答えるよりも前に盗賊の一人が馬鹿笑いを上げる。
「ガキが何をしようって言うんだ?そんなかっこよく小さな短剣を手に回しちゃってよぉ!!!全然体にあってねぇぞ!アッハッハッハッ!」
「五月蝿いよ?」
僕は馬鹿笑いを浮かべている男の背後へと一瞬で移動し、男の首を落とす。
「「「……は?」」」
あっさりと人一人殺した僕を前に騎士たちも盗賊たちも全員が固まる。
「ふふふ……それで?そこで呆然としている騎士さん?僕の手助けは必要かな?」
「えっ……アッ!よ、よろしく頼むッ!」
僕の問いに対して未だ状況を飲み込めていなさそうな女騎士が返答する。
「良し、来たッ!お礼は期待しているからね!」
僕はそう告げ、地面を蹴った。
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